講演情報
[O16-3]バイオフィードバック療法用医療機器開発を通じて見えてきた肛門機能検査の課題
荒 桃子1, 渡邊 祐介2, 坂村 颯真1, 髙橋 遼1, 奥村 一慶1, 河北 一誠1, 河原 仁守1, 本多 昌平1, 武冨 紹信1 (1.北海道大学大学院医学研究院消化器外科学教室Ⅰ, 2.北海道大学病院医療・ヘルスサイエンス研究開発機構)
【はじめに】鎖肛は約5000出生に1例で発生する代表的な小児外科疾患であり、術後の17〜77%に排便機能障害を認め、成人期に至っても便禁制を得られない症例が存在する。学童期における骨盤底筋訓練の有効性は報告されているが、訓練手技等の標準化や継続性に加え、小児向け医療機器の整備が課題である。そこで我々は、ゲーミフィケーション要素を導入した小児用バイオフィードバック(BF)療法支援医療機器の開発に着手している。今回、鎖肛術後患児を対象に肛門内圧および肛門筋電位を測定し、肛門機能検査における諸課題について検討した。
【方法】小児外科専門医1名が、鎖肛術後患児10名を対象に、意識下左側臥位にて安静時および随意収縮時の肛門内圧および肛門内筋電位を3回ずつ測定した。測定には、高解像度直腸肛門内圧用12ch圧力センサーと、新規開発した小児用肛門内挿入型筋電プローブを用いた。筋電信号は50 msec間隔の二乗平均平方根で算出した。検査値は平均±標準偏差で記載し、肛門内圧と筋電位の関係はピアソンの相関係数で解析した。
【結果】随意収縮が測定困難であった1名を除く9名(男児8名・女児1名、年齢7〜13歳)を解析対象とした。肛門内圧は安静時39.0±16.8 mmHg、随意収縮時107.1±63.9mmHg、筋電位は安静時79.4±29.1 μ V、随意収縮時850.6±665.9 μ Vであった。相関係数は安静時r=0.30(p=0.42)、随意収縮時r=0.69(p=0.04)であり、随意収縮時に中程度から強い相関を示した。一方、随意収縮時内圧が同程度(49, 52mmHg)であった患児において、筋電位は488μ Vと1838μ Vと大きな差を示す症例を確認した。
【結語】肛門括約筋の随意収縮時における肛門内圧と筋電位に有意な相関が認められ、BF療法における筋電位指標の妥当性が示唆された。しかし、肛門内圧と比較して筋電位の解釈や訓練時の閾値設定に課題があることが明らかとなった。今後の医療機器開発においては、個別キャリブレーションの導入や測定手技の標準化を含め、さらなる妥当性評価が必要と考えられた。
【方法】小児外科専門医1名が、鎖肛術後患児10名を対象に、意識下左側臥位にて安静時および随意収縮時の肛門内圧および肛門内筋電位を3回ずつ測定した。測定には、高解像度直腸肛門内圧用12ch圧力センサーと、新規開発した小児用肛門内挿入型筋電プローブを用いた。筋電信号は50 msec間隔の二乗平均平方根で算出した。検査値は平均±標準偏差で記載し、肛門内圧と筋電位の関係はピアソンの相関係数で解析した。
【結果】随意収縮が測定困難であった1名を除く9名(男児8名・女児1名、年齢7〜13歳)を解析対象とした。肛門内圧は安静時39.0±16.8 mmHg、随意収縮時107.1±63.9mmHg、筋電位は安静時79.4±29.1 μ V、随意収縮時850.6±665.9 μ Vであった。相関係数は安静時r=0.30(p=0.42)、随意収縮時r=0.69(p=0.04)であり、随意収縮時に中程度から強い相関を示した。一方、随意収縮時内圧が同程度(49, 52mmHg)であった患児において、筋電位は488μ Vと1838μ Vと大きな差を示す症例を確認した。
【結語】肛門括約筋の随意収縮時における肛門内圧と筋電位に有意な相関が認められ、BF療法における筋電位指標の妥当性が示唆された。しかし、肛門内圧と比較して筋電位の解釈や訓練時の閾値設定に課題があることが明らかとなった。今後の医療機器開発においては、個別キャリブレーションの導入や測定手技の標準化を含め、さらなる妥当性評価が必要と考えられた。