講演情報

[O16-4]直腸脱・直腸重積患者における腹腔鏡下直腸固定術前後の肛門機能および便失禁症状の変化

酒井 悠, 佐井 佳世, 米本 昇平, 松島 小百合, 鈴木 佳透, 小菅 経子, 紅谷 鮎美, 大島 隆一, 松村 奈緒美, 河野 洋一, 宋 江楓, 下島 裕寛, 岡本 康介, 國場 幸均, 宮島 伸宜, 黒水 丈次, 松島 誠 (松島病院肛門科)
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【はじめに】便失禁は肛門内圧の低下により説明されることが多いが、同程度の内圧低下でも便失禁の有無には個人差がみられる。便性異常、直腸肛門感覚障害、便排出障害、直腸機能障害、認知・運動機能障害など多様な因子が関与している。今回は、直腸脱・直腸重積患者に対する腹腔鏡下直腸固定術前後における肛門機能および便失禁症状の変化を検討し、便失禁の病態理解を深めることを目的とした。
【方法】2022~2023年の2年間当院排便機能外来を受診し、腹腔鏡下直腸固定術を施行された患者のうち、術前後で肛門内圧・感覚検査および便失禁スコアが得られた94例を対象とした。検討項目は、肛門静止圧(MRP)、肛門随意収縮圧(MSP)、初期感覚閾値(FS)、便意発現容量(DD)、最大耐容量(MTV)、Cleveland Clinic Florida Fecal Incontinence Score(CCFIS)、Fecal Incontinence Severity Index(FISI)とした。
【結果】患者背景は男性12例、女性82例、平均年齢73.6歳(15~94歳)、直腸脱72例、直腸重積22例であった。MRPは術前平均25.4±15.5 cmH₂Oから術後平均30.2±16.2cmH₂Oへ(p<0.001)、MSPは術前平均118.5±60.6 cmH₂Oから術後平均135.5±63.6cmH₂Oへ(p<0.001)と有意に上昇した。FS、DD、MTVは13例のみ測定され、有意差はなかったが術後増加傾向を認めた。FISIは術前23.5±16.5から術後12.3±11.5(p<0.001)、CCFISは術前11.5±4.4から術後8.5±3.9(p<0.001)と有意に改善した。MRPとFISIの改善又は改善なしに基づき4群に分けると、両方改善:32例、MRPのみ改善:13例、FISIのみ改善:12例、両方改善なし:6例であった。
【結語】腹腔鏡下直腸固定術は肛門内圧および便失禁症状の改善に有効であった。肛門内圧の改善と便失禁の改善は必ずしも一致せず、多角的な要因解析と個別対応が重要であると考えられた。