講演情報

[O18-6]クローン病に合併した結腸癌に対する腹腔鏡手術

井上 英美, 新谷 裕美子, 西尾 梨沙, 大城 泰平, 古川 聡美, 岡本 欣也, 山名 哲郎 (JCHO東京山手メディカルセンター)
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【はじめに】クローン病(CD)に対する腹腔鏡手術は大腸癌に対する腹腔鏡手術と共に現在では普及しつつあるが,CDに合併した結腸癌の腹腔鏡手術は比較的まれである.今回,CDに合併した結腸癌の腹腔鏡手術の成績を明らかにするため検討を行った.
【対象・方法】2011年1月から2024年12月 CDに合併した結腸癌17例を対象に,術式,臨床的背景,手術因子,病理組織学的特徴,予後を後方視的に検討した。
【結果】男性12例、女性5例、平均年齢53(歳),手術時のBMI19.1 (16.7-20.5),罹患期間 (年) 21 (16.8-23.8). 病変部位は結腸複数部位3例、盲腸4例、虫垂3例、上行結腸2例、横行結腸2例、S状結腸1例、下行結腸2例で,手術理由は癌8例,癌疑い1例,狭窄6例,瘻孔/狭窄1例,膿瘍1例であった.術式は開腹手術が10例(開腹群),腹腔鏡手術が7例(腹腔鏡群)であった,腹腔鏡群では回盲部切除が4例と最も多く,深達度T2までが5例(71.4%)とより早期の症例が多いのに対し,開腹群では結腸半側切除や大腸全摘出術など広範囲の術式が多く,深達度もT3以深が8例(80%)と進行癌が多く選択されていた.手術時間,術中出血量,術後在院日数に両群間の差はなかった.Clavien-Dindo III以上の合併症は開腹群の1例のみであった.病理組織学的には腹腔鏡群で腺癌5例,虫垂粘液腫1例,粘液癌1例(開腹術に移行)に対し,開腹群では粘液癌/印環細胞癌2例,腺癌と粘液癌/印環細胞癌の混在4例と悪性度の高い組織型の割合が多かった.断端陽性は6例認め全例T3以深で腹腔鏡手術群で少ない傾向(1/6,16.7%)にあった.術後観察期間は2.6年(1.2-5.9年)で癌による死亡は6例あり,腹腔鏡群1例(開腹に移行),開腹群5例であった.断端陽性例は6例中5例が死亡しており,有意に予後不良であった(83.3%,P = 0.035).
【結語】CDに合併した結腸癌のうち深達度T2までの腺癌で断端陰性が確保できる症例は比較的予後良好であるため腹腔鏡の適応になると考えられた.