講演情報

[O18-7]クローン病関連消化管癌の臨床像の変化

小金井 一隆, 辰巳 健志, 黒木 博介, 後藤 晃紀, 小原 尚, 中尾 詠一, 齋藤 紗由美, 杉田 昭 (横浜市立市民病院炎症性腸疾患科)
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クローン病(CD)関連消化管癌の診断と治療はCD症例の診療上大きな課題であるが近年その臨床像に変化がある.【目的】クローン病関連消化管癌合併例の臨床経過の変化から予後改善の課題を明らかにする.【対象】CD関連消化管癌を合併した自験90例(男64,女26).【方法】背景,臨床経過の推移を2016年以前診断例(前期群)と2017年以降診断例(後期群)に分けて比較した.【結果】全例のCD発症年齢は平均26歳(13~54歳)で、癌占拠部位は直腸肛門管が62例(67%)であった。前期群は40例、後期群は50例で、それぞれ、男女比は28:12と36:14で差はなく、病型別の例数は小腸型、小腸大腸型、大腸型が2,33,6と0,35,15であった。CD発症年齢は25.6歳と25.7歳で差がなく、癌診断時年齢は45歳と52歳、CD発症から癌診断まで22年と25年とそれぞれ有意差を認めた(P<0.05)。直腸肛門管癌は83%(33例)と58%(29例)で、後期で結腸小腸や瘻管内など他部位の癌症例が有意に増加した。癌の診断が手術前であった症例は62.5%(25例)と68.0%(34例)と差がなかったものの、早期癌の症例は7.5%(3例)と30.0%(15例)と後期群で有意に増加した。Stageが0,1であった症例は12.5%(5例)から42.0%(21例)に有意に増加した。Stage 0,1の26例の診断契機は術前内視鏡検査が18例、既往手術時の肛門部生検が3例、MRI検査が1例、術中、術後病理組織検査が4例であった。癌の遺残がないR0手術例は42.5%(17例)と56.0%(28例)と増加したものの有意差がなく、遠隔転移や腹膜播種などで切除術ができなかった症例は10%(4例)から22.0%(11例)に増加した。
【結語】クローン病関連消化管癌は直腸肛門管に最も多いものの、それ以外の部位の症例が増加していた。早期癌やstage 0,1の症例は増加し、内視鏡検査時などに行われる組織採取が寄与していた。一方でR0手術が可能な段階で発見できていない症例が多くあり、クローン病関連消化管癌の予後改善には発症後長期経過例に対し癌合併の可能性を念頭におき、より積極的な検査を考慮することが必要と考えられた。