講演情報

[O19-2]局所進行下部直腸癌に対する当科におけるTNTの成績

皆川 結明, 石山 泰寛, 芥田 壮平, 中西 彬人, 西 雄介, 林 久志, 藤井 能嗣, 石井 利昌, 椙田 浩文, 平沼 知加志, 平能 康充 (埼玉医科大学国際医療センター下部消化管外科)
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【背景】直腸癌に対するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)は、局所制御率の向上および遠隔転移抑制を目的として導入され、病理学的完全奏効(pCR)率の上昇が報告されている。しかし,その長期成績や手術先行治療と比較した術後合併症率が明確でないため、本邦のガイドラインではTNTを日常臨床として行わないことを弱く推奨されている。当科では2022年4月より局所進行下部直腸癌に対してTNTを導入しており、その短期成績を報告する。
【方法】2022年4月から2025年4月までに当科で局所進行下部直腸癌に対してTNT施行後に根治手術を施行した44例を対象とし、治療成績について後方視的に検討した。TNT 適応症例は80歳以下、ECOG PS 0-1の下部進行直腸癌(cT3N+M0 or cT4NanyM0)とした、TNTのスケジュールはShort course RT(25 Gy/ 5 Fr)後、CAPOX6コースを施行することとした。再度、造影CT検査、MRI検査、下部消化管内視鏡検査を術前に施行して評価し、手術を施行した。
【結果】性別(男/女)は27/17、年齢は64歳(38-80)、cStage IIIb/IIIcは20/24であった。TNTの完遂率は68.2 %(30/44例)、4コース以上施行したのは88.6 %(39/44例)であった。術式(LAR/ISR/APR/Hartman)は21/2/15/6 で、前例で経肛門・会陰操作を併用した。側方リンパ節郭清は19例に施行され、転移陽性を3例(15.8%)に認めた。術時間は297分(135-701)、出血量は20ml(2-551m)であった。Clavien-Dindo分類GradeIII以上の合併症はリンパ漏2例、癒着性腸閉塞1例であった。病理学的診断では、 pCR/pStage Ⅰ/Ⅱ/IIIa/IIIb/IIIcは14/9/5/2/10/4であり,pCRは31.8%(14/44例)であった.組織学的治療効果判定Grade 1a/1b/2/3は11/7/11/15、RM陽性例は認めなかった。観察期間中央値は444日(30-1150)であり、7例に再発を認めた。再発形式は肝転移4例、腹膜播種2例、傍大動脈リンパ節・Virchow転移1例であった。再発7例のうち4例は治療効果がGrade 1aの症例であり、pCRを得た症例では現時点で再発を認めていない。
【結語】局所進行直腸癌に対する当科のTNTの短期成績は既報と遜色がなかった。今後長期成績の検討に向けてさらなる症例の蓄積が望まれる。