講演情報

[O2-3]47歳男性の完全直腸脱嵌頓に対し腰椎麻酔下に整復し得た1例

治田 賢 (姫路聖マリア病院)
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直腸脱の発生頻度は直腸肛門疾患総数の0.2~0.5%とされ、成人では高齢多産婦の女性に多いと報告されている。完全直腸脱嵌頓は稀で、その頻度は直腸脱の2.4%とされる。
今回我々は、比較的若年男性の完全直腸脱嵌頓に対し腰椎麻酔下にジャックナイフ体位で整復し得た1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
症例は47歳、男性。10数年前から直腸脱を自覚していたが、脱出時に用手還納していた。今回受診1日前から直腸が脱出し用手還納を試みたが整復できず、さらに疼痛も出現してきたため当院に救急搬送された。来院時、新生児頭大の完全直腸脱を認め、粘膜は発赤調で高度の浮腫を呈していた。高度の浮腫により無麻酔での還納が困難であったため、腰椎麻酔下ジャックナイフ体位で、用手圧迫やいわゆる高野のガーゼ法による整復をこころみたが、粘膜出血をきたすのみで整復できなかった。最終的に外科医3人の両手で嵌頓腸管を全周性に内反し整復できた。安静加療にしていたものの、翌日再度嵌頓し、やはり無麻酔で整復できなかったため、腰椎麻酔下ジャックナイフ体位で前日同様の手技を用い5分で整復することができた。入院11日目に腹腔鏡下直腸固定術を施行し、術後8日目に退院となった。2年経過し、排便機能障害もなく直腸脱も無再発で経過している。
比較的若年男性の直腸脱嵌頓で高齢女性患者のように肛門括約筋が弛緩しておらず、整復に難渋することがある。また、本症例のように脱出腸管の浮腫が強い場合、高野のガーゼを脱出直腸内に挿入する方法が奏効しない場合もある。脱出腸管の浮腫が強い直腸脱嵌頓の整復鉗子、テーブルシュガーを脱出腸管にかけて浮腫を改善する方法や、弾性包帯の圧迫により浮腫を改善する方法等が報告されているが、本症例では、腰椎麻酔下ジャックナイフ体位で浮腫のある脱出腸管を用手的に還納することで、浮腫が強い状況でも整復することができた。