講演情報
[O2-6]機能性直腸肛門痛に対する複合的治療
河野 由紀子, 河野 大 (西新駅前こうの整形外科・おしりとおなかクリニック)
各種検査において鑑別することの困難な直腸または肛門の痛みは機能性直腸肛門痛(Functional Anorectal Pain)と呼ばれ、Rome IVではLevator Ani Syndrome(肛門挙筋症候群)とProctalgia Fugax(消散性肛門痛)に分類される。その病態は骨盤底筋の攣縮、神経の炎症や血行不良等とされてきたが未だ明らかではない。患者は肛門科以外にも、整形外科、婦人科などを受診するが器質的異常が検出されないことから心因性と判断されること等もあり、慢性疼痛による日常生活への障害・心理的負担が多い傾向にある。また治療者にとっても診断及び管理が困難なため頭を悩ませる疾患群である。今回当院において機能性直腸肛門痛と診断し、複合的治療により症状の軽快を見た症例を経験したので報告する。【症例1】60代男性。排便時及び短時間の座位にて肛門痛が出現するため前医にて肛門注入軟膏を使用したが改善なく当院受診。軽度の皮膚炎と粘膜脱、及び左右恥骨直腸筋に圧痛をみとめた。外用薬と注入軟膏の使用にて皮膚炎及び排便時痛は軽快傾向となったが、座位時の痛みが改善せずミロガバリン、デュロキセチンの内服を開始。理学療法士による理学療法を開始して、6ヶ月後にはVAS 8/10→5/10となり、その後6時間連続での乗用車運転でも痛みの出現がなくなった。【症例2】70代女性。会陰、膣、肛門の熱傷様の持続痛あり、肛門皮垂を切除したが痛みの改善が得られず当院受診。下肢の痺れもあった。肛門には病変は認められなかったが恥骨直腸筋の右と背側に圧痛を認め、腰部脊柱管狭窄症+肛門挙筋症候群と診断した。外用薬、挿肛坐剤開始、その後ミロガバリン内服開始と同時に理学療法を開始。痛みがVAS10/10と強かったため仙骨硬膜外ブロックを行なったところ著明な改善あり。変動はあるが現在痛みはVAS 1/10となることもあり内服及び理学療法継続中である。【結語】機能性直腸肛門痛と診断し、複合的治療にて症状が軽快傾向となった症例を経験したので報告する。