講演情報
[O2-7]クローン病患者の肛門病変に対する総合的治療
柴田 直哉1, 平田 智也1, 吉田 直樹1, 柴田 みつみ1, 前村 幸輔1,3, 春山 幸洋1,2, 山本 章二朗1,4 (1.いきめ大腸肛門外科・内科, 2.はるやま医院, 3.加納さくら消化器・内視鏡クリニック, 4.宮崎大学)
宮崎県のクローン病患者は約400人である。2009年1月から2025年1月までに当院でクローン病の痔瘻手術を84人(男性69人、女性15人、平均年齢23.5±9歳)行っている。観察期間は3ヶ月~15年である。手術不能例は6人で4人(男性4人、平均年齢51.3歳)が痔瘻癌、2人(女性2人、平均年齢28.7歳)が直腸狭窄、直腸膣瘻合併であった。痔瘻癌は他施設で単純痔瘻に対してシートンを長期間留置されていた症例、シートンの長期間留置と伴に陰嚢部の膿皮症を切開排膿のみ複数回行われていた症例、深部痔瘻を経過観察のみ行われていた症例であった。シートンの長期間留置、繰り返す感染巣の残存は痔瘻癌のリスクが上げると思われ、当院では感染瘻管、感染巣は深部でも、また、陰嚢部や背部まで広がる膿皮症合併部位も可能な限り切除している。一次口の処理は単純痔瘻であれば複数個でもLay open、複雑痔瘻の場合は括約筋温存(部分的切除)手術を行い、シートンを内外括約筋間と1次口に留置し、基本的に1ヵ月で抜去している。直腸粘膜下に膿瘍が広がる場合は1次口から粘膜下に留置し、自然抜去している。手術回数は平均1.8±1.5回である。現在までに術後肛門機能で問題となった症例は経験していない。生物製剤の使用は73人で、内服薬、生物製剤の使用、変更は消化器内科が担っている。腸管狭窄が合併する場合は大腸外科が手術を行っており、総合的に専門施設同士で連携して治療を行っている。現在は以前であれば全体像の把握が困難であった複雑痔瘻でもMRIで深達度、進展形式を確認可能である。また、再手術が必要な場合でもエコーでは特定困難な遺残した感染巣の特定も可能で、必要な部位だけの切除が可能となっている。ダルバトストロセルの適応除外例でも使用可能な状態とし、治癒となった症例もいる。今回はクローン病痔瘻について、複雑痔瘻であっても、二次瘻管、深部感染巣、膿皮症合併部まで切除すれば治癒可能ではないかとの観点から発表したい。