講演情報
[O20-1]術前MRI画像から下部直腸癌における側方郭清適応基準
佐伯 泰愼, 田中 正文, 福永 光子, 米村 圭介, 大原 真由子, 水上 亮介, 山田 一隆 (大腸肛門病センター高野病院外科)
【背景・目的】下部直腸癌におけるリンパ節(LN)転移は,上方向リンパ節転移のみではなく側方リンパ節(LLN)転移が15-20%存在する.LLN転移を有する症例の予後は一般的に不良とされており,そのため本邦においてはLLN郭清(LLND)が推奨されているが,そのLLN転移の術前診断基準の定義は確立していない.今回当院でLLNDを施行した下部直腸癌症例で,術前MRIによるLLN転移診断能と転移予測因子を同定することを目的とした.【対象・方法】2011-23年に術前MRIを施行した術前未治療のpStage I-III下部直腸癌110例を対象とし,LN (腸間膜・側方)転移診断能、LLN(263,283)転移予測因子を検討した.LNは短径サイズ,malignant features(MF)因子(内部不均一,辺縁不整,円形)を評価し, 4mm以下かつMF3因子, 5-9mmかつMF2因子以上, 10mm以上を転移陽性と定義した.【結果】(1)患者背景:男女比 79:31, 平均年齢63.5歳,組織型 tub1:tub2:por/sig/muc=51:39:20, pStage I:II:III=28:33:49,LLN転移19例(17%). (2)腸間膜LN (251)転移診断能:ROC曲線にて5mmがカットオフ値.短径サイズ5mmのみでの感度,特異度は0.76,0.57,サイズ&MF因子での感度,特異度は0.69,0.82であり,特異度はサイズ&MF因子が優れていた.(3)LLN(263,283)転移診断能:ROC曲線にて5mmがカットオフ値.短径サイズ5mmのみでの感度,特異度は0.67,0.86,サイズ&MF因子での感度,特異度は0.67,0.95であり,特異度はサイズ&MF因子が優れていた.(4)LLN転移予測能の比較:MRIによるcT, MRIによるLLN転移(サイズ&MF因子)予測, 主治医総合判断によるcT, 主治医総合判断によるLLN転移予測の感度は各々0.73, 0.74, 0.68, 0.79, 特異度は各々0.25, 0.90, 0.14, 0.77で特異度はMRIによるLLN転移(サイズ&MF因子)予測が優れていた.(5)LLN転移因子:多変量解析にて組織型(tub1以外)・LLN転移予測が因子として抽出された.LLN転移頻度は,tub1&LLN(-)予測, tub1以外&LLN(-)予測,tub1& LLN(+)予測, tub1以外&LLN(+)予測で各々1, 6, 33, 79(%)であった.【結語】LLN転移診断は,術前MRIにてサイズとMF因子の組み合わせで評価することで可能である.また組織型との組み合わせでLLNDの適応を考慮することができる.