講演情報
[O20-4]術前のMRI評価によって側方郭清を省略した直腸癌の長期治療成績
梶原 由規1, 望月 早月1, 岡本 耕一1, 山寺 勝人1, 守矢 恒司1, 曽田 悠葵1, 田代 恵太1, 菊家 健太1, 川内 隆幸1, 相原 一紀1, 田代 真優1, 廣瀬 裕一1, 大塚 泰弘1, 及川 功1, 倉澤 秀紀1, 神藤 英二2, 岸 庸二1, 上野 秀樹1 (1.防衛医科大学校外科学講座, 2.自衛隊中央病院外科)
背景:大腸癌治療ガイドライン(GL)では、術前・術中に側方リンパ節(LN)転移陰性と診断された直腸癌に対しても側方郭清を行うことが弱く推奨されているが、側方郭清の生存改善効果は限定的であり、いわゆる”予防的”側方郭清を行うべき症例の選択基準はいまだ明らかではない。当科では2016年以降、術前骨盤MRIで評価した側方LNの最大短径に基づき側方郭清の適応を決定しており、第96回大腸癌研究会でその治療成績を報告した。今回、対象症例全例が術後3年以上経過したため、予後情報を更新して術前MRI所見で判断した側方郭清省略の妥当性を検証した。
方法:根治的切除した腫瘍占居部位にRbが含まれるT3以深の直腸癌164例(2016~2022年)を対象とした(観察期間中央値:55ヵ月)。術前に3mmスライス厚の骨盤MRIをT2強調画像で2方向以上撮像し、放射線科医の読影に加えて複数の大腸領域専門の外科医にて詳細に読影した。側方LNは短径7mm以上を転移陽性と診断した。骨盤の左右別にMRIの側方領域を評価し、偽陰性の安全域を考慮して短径5mm以上のLNが皆無の場合に当該領域の側方郭清を省略した。GLを遵守して術後経過観察を行った。
結果:側方郭清は31例で両側に、34例で片側に施行し、99例で省略した。5mm以上の側方LNが存在する85領域全てに側方郭清を施行し、31領域(36.5%)に側方転移を認めた。側方郭清施行の96領域中2領域(2.1%)、郭清省略の232領域中9領域(3.9%)に側方領域再発が生じたが、両者の頻度に有意差はなかった。非郭清の側方領域に再発を認めた8例のうち、3例は側方再発時に多発遠隔転移を伴っており、2例は骨盤内再発巣に附随した側方LN転移であり、これらの症例では”予防的”側方郭清は再発抑制に寄与しなかったと考えられた。残り3例は側方単独再発であった。1例はLN腫大で再発し、再発巣切除後5年以上無再発である。2例は不整結節として側方領域に再発したため、化学療法と重粒子線治療を行い、うち1例は多発遠隔転移を来し原癌死した。以上より、側方郭清省略で純粋な側方LN再発を来したのは1例のみであり、追加手術で治療可能であった。
結語:精緻なMRI診断に基づく側方郭清の適応判断は妥当であると考えられた。
方法:根治的切除した腫瘍占居部位にRbが含まれるT3以深の直腸癌164例(2016~2022年)を対象とした(観察期間中央値:55ヵ月)。術前に3mmスライス厚の骨盤MRIをT2強調画像で2方向以上撮像し、放射線科医の読影に加えて複数の大腸領域専門の外科医にて詳細に読影した。側方LNは短径7mm以上を転移陽性と診断した。骨盤の左右別にMRIの側方領域を評価し、偽陰性の安全域を考慮して短径5mm以上のLNが皆無の場合に当該領域の側方郭清を省略した。GLを遵守して術後経過観察を行った。
結果:側方郭清は31例で両側に、34例で片側に施行し、99例で省略した。5mm以上の側方LNが存在する85領域全てに側方郭清を施行し、31領域(36.5%)に側方転移を認めた。側方郭清施行の96領域中2領域(2.1%)、郭清省略の232領域中9領域(3.9%)に側方領域再発が生じたが、両者の頻度に有意差はなかった。非郭清の側方領域に再発を認めた8例のうち、3例は側方再発時に多発遠隔転移を伴っており、2例は骨盤内再発巣に附随した側方LN転移であり、これらの症例では”予防的”側方郭清は再発抑制に寄与しなかったと考えられた。残り3例は側方単独再発であった。1例はLN腫大で再発し、再発巣切除後5年以上無再発である。2例は不整結節として側方領域に再発したため、化学療法と重粒子線治療を行い、うち1例は多発遠隔転移を来し原癌死した。以上より、側方郭清省略で純粋な側方LN再発を来したのは1例のみであり、追加手術で治療可能であった。
結語:精緻なMRI診断に基づく側方郭清の適応判断は妥当であると考えられた。