講演情報

[O20-6]進行下部直腸癌における側方郭清省略症例の検討

岩田 至紀, 田中 千弘, 桐山 俊弥, 長尾 成敏, 河合 雅彦 (岐阜県総合医療センター外科)
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【はじめに】大腸癌治療ガイドライン2024年版において腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にあり、壁深達度がcT3以深の直腸癌には側方郭清を推奨されているが、側方リンパ節転移の診断基準や側方郭清を省略できる症例の基準は明らかではない。実臨床においては、年齢や基礎疾患を考慮して側方郭清を省略することは多々ある。【目的】側方郭清省略症例における特徴を検証すること。【対象と方法】2011年1月から2019年12月に当院で原発巣切除術を施行した進行下部直腸癌(RaRbを含む)106例のうち、cStageII-IIIの86例を後ろ向きに検討した。LD2-3群とLD0-1群にわけ、臨床病理学的所見と長期成績を比較した。【結果】LD2-3は51例に施行されていた。LD1が7例、LD0が28例であり、側方郭清を省略したLD0-1症例は35例であった。省略した理由は、高齢が9例、Rb進展わずかが9例、同時多発癌・重複癌が5例、基礎疾患が5例、前治療による省略が3例、排尿障害が2例、肥満が1例、不明が2例であった。cN3症例は17例で、省略した4例は全例片側郭清であった。臨床病理学的には、年齢に有意差を認め、LD2-3群63.5歳(平均値)に対してLD0-1群73.1歳であった。5年累積再発率と骨盤内再発率は有意差を認めなかった(P=0.25、P=0.62)。7年全生存率は有意差をもってLD2-3群が良好であったが、がん特異的生存率は有意差を認めなかった(P=0.0006、P=0.31)。【考察】実臨床において年齢や、占拠部位、基礎疾患を十分に考慮することで一定の割合で予後に影響を及ぼすことなく側方郭清を省略することが可能と思われた。限られた症例での検討であり、症例数の蓄積が必要である。