講演情報

[O21-5]創部の面積とテンションを最小化したEA法の治療成績と手技の実際

太田 盛道, 安部 達也, 渡邉 賢二, 小原 啓, 鉢呂 芳一, 國本 正雄 (くにもと病院)
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【目的】一般に大きい痔核や全周性の痔核に対して結紮切除術を施行すると、出血や疼痛などの術後合併症のリスクが高くなる。当院では術後合併症の発生率を減らすために,LE法と比較して痔核の切除範囲を小さくできるEA法を積極的に適用している.さらに術後の出血や疼痛は排便時や排便後に認められることが多いため,創部に掛かるテンションが最小化するような手術を目指している.今回、我々が行っているEA法の手技の実際と治療成績について報告する。
【手術手技】手術は仙骨硬膜外麻酔下のジャックナイフ体位で行う.当院のEA法はE3・AまたはA・E3法である.創面を最小化して創部をテンションフリーにするポイントは,①肛門上皮を極力残す,②内外痔核の背面を上下左右に十分剥離する、③内痔核と外痔核の間も十分に剥離する,の3点である。これらの工夫によって創面は肛門縁のドレナージ創のみとなるため,術後出血のリスクを軽減できる.さらに根部結紮部やセミクローズ部分は平坦で柔らかくなるため,排便の際にも余裕をもって肛門管が拡張できる.また内痔核の剥離を十分に行うと,内痔核が口側に引き込まれて縮小・平坦化するので,少量のALTA投与で十分な効果が得られる場合が多い.その結果としてALTA療法特有の合併症リスクも軽減できると考えられる。
【成績】当院で2011年から2020年に行った内外痔核手術6601例のうち、3,403例(51.6%)にEA法が施行された。E・A法の術後合併症は30日以内(早期)では、止血術を要する出血が29例(0.9%)に認められた。31日以降(晩期)では、肛門周囲膿瘍/痔瘻が15例(0.4%)、肛門狭窄が5例(0.2%)、直腸潰瘍3例(0.1%)が認められた。術後5年、10年累積無再発率 (95%信頼区間) はそれぞれ92.5%(90.5-94.1%)、67.2%(59.6-73.7%)であった。
【結語】創部の面積とテンションを最小化したEA法はLE法と同等の根治性を確保しつつ、LE法に比べて術後合併症を軽減できる術式であると考えられる。