講演情報

[O22-3]上行結腸癌による腸重積の1例

多木 雅貴, 豊田 昌夫, 濱口 拓哉 (社会医療法人仙養会北摂総合病院一般消化器外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
成人腸重積症は比較的珍しく、その内大腸の腸重積は悪性腫瘍に起因することが多いと報告されている。今回、我々は上行結腸癌に起因した腸重積症の1例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。症例は61歳男性で、基礎疾患に亜急性連合性脊髄変性症および加齢黄斑変性症がある。1年前からのふらつきを主訴に2024年10月に前医を受診された。その際にHb 5.0 g/dLと高度の貧血を認めたため鉄欠乏性貧血の診断で内服加療行われ、Hb 11.2 g/dLまで改善したため経過観察されていた。2025年5月の定期受診の際にHb 8.4 g/dLと貧血の増悪と経口摂取不良を認めたため全身CT検査を施行したところ、上行結腸の壁肥厚や周囲脂肪織濃度上昇および微小遊離ガスを認めたため憩室穿孔の疑いで当科を紹介受診された。受診時、高炎症反応を認めるものの腹膜刺激症状は認めず、入院日より貧血補正をした上で、翌日に精査を行う方針とした。まずガストロ注腸検査を施行したところ腸重積の所見を認め、続いて大腸内視鏡検査を施行したところ、上行結腸の内腔を満たす1型腫瘍を先進部とした腸重積症と診断した。閉塞性大腸炎には至っておらず、微小穿孔の疑いもあったため整復はせず早期手術の方針とし、入院6日目に腹腔鏡下右半結腸切除術+D3郭清を施行した。術後経過は概ね良好であった。医学中央雑誌で「上行結腸腫瘍」「腸重積症」をキーワードに全期間で検索したところ、上行結腸の悪性腫瘍を先進部とした腸重積症は自験例を含め22症例(会議録は除く)を認めた。男性8例(36%)、女性14例(64%)と女性に多く、平均年齢は76.9歳(80.5 ±11.4)であった。腫瘍の内訳は、結腸癌が20例(91%)、転移性腫瘍が1例(4.5%)、結腸GISTが1例(4.5%)であった。多くの症例で術前もしくは術中に整復を試みている事が多いが、本症例では閉塞に至っておらず整復は施行しなかった。現時点で、悪性腫瘍による腸重積症に対して術前もしくは術中に整復することによる術後の再発や予後との関係については明確な方針は定まっておらず、文献的報告を含めて考察する。