講演情報
[O22-5]S状結腸吻合部と左尿管に瘻孔を形成した1例
延廣 征典, 亀山 仁史, 窪田 晃, 岩谷 昭, 山崎 俊幸 (新潟市民病院消化器外科)
【症例】61歳、男性。以前よりS状結腸憩室炎を繰り返しており、保存加療が行われていた。腹痛で前医を受診、CTでS状結腸憩室炎とfree airを認め、当院紹介受診した。来院時はvital signs安定しており、全身状態は保たれていたが、腹膜刺激徴候と炎症反応高値を認めたため、S状結腸憩室穿孔に対して緊急手術を施行した。[初回手術]S状結腸憩室を無数に認め、一部は膀胱壁や小腸と強固に癒着していた。S状結腸部分切除術と、癒着していた膀胱壁は一部筋層レベルまで切除、修復した。[経過]術後9日目に退院した。約1か月後に発熱あり、CTで骨盤底に膿瘍と、吻合部近傍より頭側の左尿管拡張および左水腎症を認めた。炎症反応の上昇あり、minor leakageと判断した。入院加療の上で禁食、抗菌薬投与を行い症状の改善が得られたが、退院後もしばしば微熱を認めており抗菌薬を処方していた。初回手術から約3か月後に高熱と全身倦怠感あり、CTで骨盤底膿瘍は縮小していたが、左水腎症と左腎周囲の脂肪織濃度上昇あり、左腎盂と尿管内にairを認めた。S状結腸吻合部と左尿管に瘻孔が形成され、複雑性尿路感染症に至っていると判断した。経尿道的尿管ステント留置を試みたが、中部尿管より狭窄が著明であり不能であった。今後も尿路感染症を繰り返すことが予想されたため、手術を施行した。[2回目手術]S状結腸中間位のレベルで左尿管をテーピング、膀胱側に向けて露出していった。骨盤底でS状結腸吻合部と小腸の癒着を剥離して吻合部と左尿管の瘻孔部を同定した。瘻孔部を含む腸管切除および左尿管切除を試みたが、尿管吻合は困難と判断した。瘻孔部より膀胱側の左尿管を結紮処理して切離、左腎摘除を行い、腹膜反転部レベルから横行結腸中間位程度までの結腸切除、吻合を行った。[術後経過]良好であり、9日目に退院した。以降は尿路感染症の再燃なく経過している。
【考察】S状結腸憩室が左尿管と瘻孔を形成し、尿路感染症を発症したとする報告は散見されるが、本例のように腸管吻合部と尿管で瘻孔を形成したとする報告は極めて少ない。minor leakageによる持続する炎症が原因となった可能性がある。文献的考察を加えて報告する。
【考察】S状結腸憩室が左尿管と瘻孔を形成し、尿路感染症を発症したとする報告は散見されるが、本例のように腸管吻合部と尿管で瘻孔を形成したとする報告は極めて少ない。minor leakageによる持続する炎症が原因となった可能性がある。文献的考察を加えて報告する。