講演情報
[O22-6]S状結腸機能的端々吻合部に生じたblind loop syndromeの1例
上野 啓輔, 高島 順平, 大野 裕文, 三井 愛, 浅見 桃子, 小泉 彩香, 南角 哲俊, 峯崎 俊亮, 山崎 健司, 杉本 斉, 藤本 大裕, 黒田 浩章, 三浦 文彦, 小林 宏寿 (帝京大学医学部附属溝口病院外科)
Blind loop syndrome(BLS)は手術により生じた解剖学的blind loopに細菌の異常増殖をきたし、腹痛や便秘、消化吸収不良を呈する病態である。一般的には側々吻合や側端吻合を行った際の短絡部や盲端部に生じることがほとんどであり、機能的端々吻合部にBLSを発症することは稀である。今回われわれはS状結腸機能的端々吻合部に発症したBLSを経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。症例は58歳、女性。前医でS状結腸過長症に対してS状結腸切除術を施行され、再建は機能的端々吻合が行われた。術後に腹痛、便秘症状を認め、術後3ヶ月に腹腔鏡補助下横行結腸双孔式人工肛門造設術を施行されたが、腹部症状の改善を得られず、当科紹介となった。腹部造影CTにて機能的端々吻合部の軽度拡張および便塊貯留を認め、BLSおよび腸管運動機能不全疑いと診断した。人工肛門肛門側腸管への便の流入を認めたが,排便困難であり摘便が常に必要な状態が続いていた。患者の希望もあり,機能的端々吻合部を含めた人工肛門肛門側腸管の切除を腹腔鏡下に施行した。術後経過は良好で、合併症なく術後7日目に退院となった。その後2年間症状再燃なく経過している。機能的端々吻合部にBLSを発症した症例は少なく、「機能的端々吻合」「blind loop」のキーワードを用いた医学中央雑誌での検索では、これまでに3例のみ報告を認めた。本症例も含めた4例のうち、3例が左側結腸の手術で生じており、水分吸収により腸管内容物が固形となることによる吻合部への停滞がBLSの誘因となる可能性がある。機能的端々吻合部に生じたBLSに対する治療法は確立していないが、本症例も含めた全症例で吻合部の切除が施行され症状の改善を得られており、吻合部切除が有効な治療法と考えられる。機能的端々吻合法は消化管手術において広く行われている吻合法であり、今後は本症例に類似した合併症が増加する可能性がある。報告例が少なく、予防法や治療法も確立しておらず、今後症例の蓄積と更なる検討が必要である。