講演情報

[O23-1]術前診断が困難であったS状結腸神経鞘腫に対し腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した1例

武田 和1,2, 團野 克樹1, 深田 唯史1, 中道 伊津子3, 吉原 輝一2, 内藤 敦2, 能浦 真吾2, 山本 慧1, 東口 公哉1, 野口 幸蔵1, 吉村 弥緒1, 平尾 隆文1, 関本 貢嗣1, 岡 義雄1 (1.箕面市立病院外科, 2.堺市立総合医療センター外科, 3.箕面市立病院病理診断科)
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神経鞘腫はSchwann細胞から発生する神経原性腫瘍であり、主に脊髄、脳、頭頸部、四肢などに好発する。消化管に発生する神経鞘腫は稀であり、その発生頻度は全体の10%未満とされる。その中でも、大腸原発は消化管神経鞘腫の5%未満と極めて稀であり、大腸原発の間葉系腫瘍に占める割合も約3%に過ぎない。今回、術前診断が得られなかったS状結腸神経鞘腫に対して腹腔鏡下に切除を施行した1例を経験したため報告する。
症例は80歳代女性。便潜血陽性に対する精査目的で大腸内視鏡検査を施行したところ、肛門縁より26cmのS状結腸に20mm大の表面平滑な粘膜隆起性病変を認めた。内視鏡下ボーリング生検を施行したが、採取組織に腫瘍細胞を認めず確定診断には至らなかった。胸腹部造影CTでは、早期相より濃染される境界明瞭な20mm大の腫瘤を認めたが、明らかなリンパ節腫大や遠隔転移は認められなかった。消化管間葉系腫瘍(GIST)、神経内分泌腫瘍(NEN)などの可能性を否定できず、診断的治療として腹腔鏡下S状結腸切除術およびD3郭清を施行した。病理組織学所見では、紡錘形細胞の束状増生が認められた。免疫組織学染色では、S-100(+)・c-kit(-)・CD34(-)・αSMA(-)であり、Ki-67陽性率は1%未満であったことから、神経鞘腫と診断された。合併症なく経過し、術後9日目に退院となった。
大腸神経鞘腫は術前に確定診断を得ることが困難であり、多くが粘膜下腫瘍として手術に至る。本症例においても術前診断が得られなかったため、GISTやNENなど他の粘膜下腫瘍を念頭に置きつつ、悪性の可能性を考慮して根治性を損なわないよう手術を施行した。本疾患の確定診断には免疫組織学的検査が必須であり、術前の画像診断や生検の工夫による診断精度向上が課題である。