講演情報
[O23-2]肝膿瘍を伴う直腸癌に対し、抗生剤加療後にロボット支援下手術を施行した一例
久野 晃路, 福長 航, 川相 雄暉, 大下 恵樹, 仲野 健三, 河合 隆之, 前川 久継, 奥知 慶久, 井口 公太, 田中 英治, 福田 明輝, 寺嶋 宏明, 田浦 康二朗 (公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院消化器外科)
【背景】
手術適応となる大腸癌患者の約10%に同時性の肝転移があると報告されており、日常診療においてもたびたび経験する。一方で大腸癌が原因の肝膿瘍は肝膿瘍の中の5%以下と報告されている。肝膿瘍を合併した大腸癌の報告も散見されるが、肝膿瘍と肝転移の鑑別に難渋することがある。
【症例】
80代、男性
【現病歴】
Ra直腸癌に対するロボット支援下手術が計画されていた。手術までの待機経過中、発熱を主訴に当院救急外来を受診。CTで複数の肝膿瘍あるいは肝転移を示唆する腫瘤性病変を認めた。同日入院のうえ、抗生剤加療を開始した。
抗生剤加療により熱型や炎症反応は改善傾向を認めた。画像上、肝膿瘍と肝転移の鑑別は容易でなかったが、過去のCTと比較し腫瘤の増大スピードが急速であったこと等から臨床的には肝膿瘍を疑った。経皮経肝穿刺による細胞診でさらに精査したところ明らかな悪性所見はみられなかった。
肝膿瘍をより強く疑い抗生剤加療を継続した。治療より約3週間の経過で肝膿瘍はいずれも縮小傾向を認めたため、Ra直腸癌に対するロボット支援下低位前方切除術を施行した。術後経過は良好でPOD10に退院となった。
【考察】
細菌性肝膿瘍は経胆道性、血行性、直接性に肝臓に細菌が感染することが原因と考えられている。腹腔内臓器の炎症病巣から細菌が経門脈的に肝臓に運ばれ、膿瘍形成に至る報告も散見される。
造影CT検査における肝膿瘍と転移性腫瘍の鑑別については、膿瘍では中央部の低濃度域を除く周辺に造影効果があるとされているが、中心部で壊死を起こした転移性腫瘍との鑑別は困難なこともある。大腸癌の精査中もしくは同時に肝膿瘍と診断されるケースでは肝病変を穿刺することで、病巣が肝転移巣であった場合の播種について懸念される。
自験例では、経過から肝膿瘍を疑い転移の可能性は少ないと考えていたため、播種リスクを強くは懸念せず穿刺を行った。細胞診で悪性所見がみられなかったことで膿瘍の可能性をより強く考え、抗生剤を継続しつつ直腸癌に対する根治術が可能であった。
【結語】
肝膿瘍を伴う直腸癌に対し、肝膿瘍軽快後にロボット支援下手術を施行した一例を経験した。
手術適応となる大腸癌患者の約10%に同時性の肝転移があると報告されており、日常診療においてもたびたび経験する。一方で大腸癌が原因の肝膿瘍は肝膿瘍の中の5%以下と報告されている。肝膿瘍を合併した大腸癌の報告も散見されるが、肝膿瘍と肝転移の鑑別に難渋することがある。
【症例】
80代、男性
【現病歴】
Ra直腸癌に対するロボット支援下手術が計画されていた。手術までの待機経過中、発熱を主訴に当院救急外来を受診。CTで複数の肝膿瘍あるいは肝転移を示唆する腫瘤性病変を認めた。同日入院のうえ、抗生剤加療を開始した。
抗生剤加療により熱型や炎症反応は改善傾向を認めた。画像上、肝膿瘍と肝転移の鑑別は容易でなかったが、過去のCTと比較し腫瘤の増大スピードが急速であったこと等から臨床的には肝膿瘍を疑った。経皮経肝穿刺による細胞診でさらに精査したところ明らかな悪性所見はみられなかった。
肝膿瘍をより強く疑い抗生剤加療を継続した。治療より約3週間の経過で肝膿瘍はいずれも縮小傾向を認めたため、Ra直腸癌に対するロボット支援下低位前方切除術を施行した。術後経過は良好でPOD10に退院となった。
【考察】
細菌性肝膿瘍は経胆道性、血行性、直接性に肝臓に細菌が感染することが原因と考えられている。腹腔内臓器の炎症病巣から細菌が経門脈的に肝臓に運ばれ、膿瘍形成に至る報告も散見される。
造影CT検査における肝膿瘍と転移性腫瘍の鑑別については、膿瘍では中央部の低濃度域を除く周辺に造影効果があるとされているが、中心部で壊死を起こした転移性腫瘍との鑑別は困難なこともある。大腸癌の精査中もしくは同時に肝膿瘍と診断されるケースでは肝病変を穿刺することで、病巣が肝転移巣であった場合の播種について懸念される。
自験例では、経過から肝膿瘍を疑い転移の可能性は少ないと考えていたため、播種リスクを強くは懸念せず穿刺を行った。細胞診で悪性所見がみられなかったことで膿瘍の可能性をより強く考え、抗生剤を継続しつつ直腸癌に対する根治術が可能であった。
【結語】
肝膿瘍を伴う直腸癌に対し、肝膿瘍軽快後にロボット支援下手術を施行した一例を経験した。