講演情報
[O23-5]内視鏡的瘻孔閉鎖術にて治癒した原因の不明な直腸膣瘻の1例
丹羽 浩一郎, 関 英一郎, 松澤 宏和, 齋田 将之 (太田総合病院外科)
【はじめに】原因の不明な直腸膣瘻孔は比較的まれな疾患である.今回,我々は内視鏡的瘻孔閉鎖術にて治癒した原因の不明な直腸膣瘻の1例を経験したので報告する.【症例】30歳代,女性.2週間前より会陰部と肛門の痛みを認めていたが経過観察していた.症状が増悪し座位が困難となったため当院婦人科受診した.婦人科診察で直腸に腫瘤を触知するため,精査・加療目的に当科紹介となった.身体所見では肛門周囲と下腹部に圧痛を認め,血液検査所見でCRP 2.63mg/dLと炎症反応の上昇を認めた.CT検査にて,直腸壁の著明な肥厚と周囲脂肪織濃度の上昇を認めた.また仙骨前面のリンパ節腫脹と液体貯留も認めた.精査目的に施行した下部消化管内視鏡検査では直腸Rbに中心部に陥凹を伴う立ち上がりが緩やかな隆起を認めた.陥凹部の生検を施行したが悪性所見は認めなった.翌日透視下に下部消化管内視鏡検査を再度施行した.陥凹部に散布チューブを挿入して造影剤を散布すると膣が造影されたため,本態性直腸膣瘻と診断した.骨盤MRI検査,婦人科診察を施行して婦人科疾患を否定した.膣鏡を用いた婦人科医師による診察で膣後壁に瘻孔を認めた.本態性直腸膣瘻の瘻孔閉鎖目的に下部消化管内視鏡下に瘻孔をクリップ6個使用して閉鎖した.瘻孔閉鎖の翌日症状は軽快した.その後症状の再燃は無く,半年後に経過観察目的で施行したCT検査では直腸壁の肥厚と周囲脂肪織濃度の上昇は消失していた.1年後に施行した下部消化管内視鏡検査では直腸Rbにあった中心部に陥凹を伴う隆起は消失し,瘢痕を認めた.【結語】内視鏡的瘻孔閉鎖術にて治癒した原因の不明な直腸膣瘻の1例を経験した.悪性疾患,婦人科疾患,炎症性腸疾患を否定した症例では,治療として下部消化管内視鏡による瘻孔閉鎖は有用であると考えられた.