講演情報

[O23-6]腹腔鏡下に切除し得た異なる組織型の傍直腸嚢胞の2症例

大沢 桃香, 本郷 久美子, 中川 基人, 高野 公徳, 米山 公康, 藤崎 洋人, 田島 佑樹, 林 啓太, 原 明日香, 西村 英理香, 渡部 希美, 室井 貴子, 大谷 理紗, 林 智大, 小原 雅也 (平塚市民病院外科)
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【背景】
傍直腸嚢胞は稀な疾患であり、多くは良性であるが、感染や悪性化のリスクを伴う。画像診断のみで確定診断を得ることは難しく、腫瘍径や構造によっては悪性疾患や他の腫瘍性病変との鑑別を要する。今回、腹腔鏡下切除を行った異なる組織型の2症例を経験したため、報告する。
【症例1】42歳女性。健康診断目的のCTで直腸背側に9cm大の嚢胞性病変を指摘され、当院を紹介受診した。MRIでは多房性嚢胞性病変を認め、傍直腸嚢胞が疑われた。鑑別には類上皮嚢胞および尾腸嚢胞を挙げたが、腫瘍径が大きく内部構造に複雑性を認めたため、悪性疾患の除外と診断確定を目的に腹腔鏡下切除を施行した。直腸後面の間膜内に位置する嚢胞を認め、周囲との癒着は軽度で明瞭な被膜を有していた。大きさが大きいため剥離操作はやや難渋したが腸管損傷はなく切除を行った。病理診断はEpidermal cystであり、悪性所見は認めなかった。
【症例2】52歳女性。2月に肛門部腫脹を自覚し、5月に再発した。前医では痔瘻と診断されたが、直腸背側に新たな多房性嚢胞性病変を認め、傍直腸嚢胞が疑われた。痔瘻癌を含む肛門由来の粘液癌も鑑別に挙げたが、痔瘻の罹病期間が短く、臨床経過および画像所見からは悪性を強く示唆する所見に乏しかった。確定診断および他の腫瘍性疾患の除外を目的に腹腔鏡下切除を施行した。骨盤底筋群の中に埋まりこむ様に存在し、周囲組織との癒着が比較的強く慎重な剥離操作を要した。病理診断は尾腸嚢胞であり、悪性所見は認めなかった。
【考察】
傍直腸嚢胞は多様な臨床像を呈し、診断には画像評価が重要である。特にMRIは、嚢胞性病変の形態や局在を詳細に評価するうえで有用であり、治療方針決定に寄与した。腹腔鏡下切除は、低侵襲で良好な視野が確保できる上、それぞれの嚢胞の形態や局在の進展を確認することができ、診断と治療の双方を安全に実施できる有効な手段であると考えた。
【結語】異なる組織型を示す傍直腸嚢胞2例を経験した。文献的考察を加えてこれらを報告する。