講演情報

[O23-7]自己摘便が原因と思われるISR後の直腸穿通の一例

前本 遼, 佐藤 総太, 伊藤 拓馬, 三原 開人, 服部 晋明, 宮本 匠, 岩﨑 純治, 金澤 旭宣 (島根県立中央病院外科)
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症例は50歳代の男性.4日前からの発熱と肛門痛で近医を受診し,肛門周囲膿瘍の疑いで当院へ紹介となった.既往歴に直腸癌(pT2N1aM0)に対するISR(intersphincteric resection: 括約筋間直腸切除術)と糖尿病があった.肛門外観に異常所見はなく,直腸診では膿性排液の付着を認めた.血液検査では炎症反応の上昇を認め,腹部CT検査では直腸背側に内部airを含む液体貯留を認めた.注腸検査では吻合部口側背側に造影剤の漏出を認めた.示指が届く距離であったため,透視下にネラトンを穿通部に挿入したところ,膿性排液を得た.直腸穿通と診断したが,ISRからは4年以上が経過していた.詳細な問診を追加したところ,ISR後から時々自己摘便を行なっているとの情報を得たため,摘便による直腸穿通が最も考えられた.入院後は抗菌薬投与,ネラトンからの洗浄を行い,症状や炎症反応は改善した.入院から10日目に体動を契機にネラトンが脱落したが,その後も症状や炎症反応の再燃はなく,入院16日目に退院となった.外来で再度注腸検査を行なったところ,瘻孔は残存していたが,cavityから回収される排液は漿液性であった.瘻孔を閉鎖しても問題ないと考え,内視鏡下にクリップで瘻孔を閉鎖した.その後は症状の再燃もなく経過している.摘便による直腸穿孔の報告は稀であり,特に直腸切除後での報告はないため,文献的考察とともに報告する.