講演情報

[O28-6]腹腔鏡下手術を併用し、ロボット支援下手術を施行したPersistent Descending Mesocolonを伴う直腸癌の1例

團野 克樹, 深田 唯史, 武田 和, 山本 彗, 東口 公哉, 野口 幸藏, 平尾 隆文, 関本 貢嗣, 岡 義雄 (箕面市立病院外科)
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【はじめに】Persistent Descending Mesocolon(PDM)は、発生過程で左側結腸が壁側腹膜と癒合せず、下行結腸が内側に変位する比較的稀な固定異常である。PDM患者では下行結腸だけでなくS状結腸も内側から右側に変位し、小腸間膜や右骨盤壁に癒着する。そのため腹腔鏡下手術では解剖認識や癒着剝離手順など手術手技に工夫を要し、非PDM症例と比較して、手術時間の延長が報告されており、縫合不全の独立した危険因子とも報告されている。
ロボット支援下手術は一般的に「精密な小さな動き」を得意とする一方で、「大きな動き」や「広範囲の操作」は苦手とされる傾向がある。今回我々は、腹腔鏡下手術を併用し癒着剥離を行い、ロボット支援下手術を施行したので報告する。
【症例】症例は 80代、男性。貧血、便潜血陽性にて下部消化管内視鏡検査を行い、上部直腸に2型進行癌を認めた。腹部造影CT 検査では下行結腸が内側に変位しており、PDMを伴う直腸癌と診断したが、血管分岐はIMA からLCA、S状結腸動脈(SA)がそれぞれ独立分岐した独立分岐型であった。
術中所見では下行結腸は内側に変位し、S状結腸は骨盤内右側腹膜および小腸間膜と広く癒着していた。まずは腹腔鏡下に癒着剥離を行い、S状結腸間膜右側を露出させ、続いてロボット支援下に内側から下腹神経前筋膜の層で剥離を行い左側結腸を授動。その後はロボット支援下の安定した視野で、通常の直腸低位前方切除術を行なった。血管走行異常を考慮し、ICG蛍光法により吻合腸管の良好な血流を確認し安全に吻合を行った。術後合併症は認めなかった。
【まとめ】PDM の解剖学的特徴を理解し、注意深く手術操作を行うことでPDM症例においてもロボット支援下手術を安全に行うことができる。今回、癒着剥離を腹腔鏡下に行うことで、ロボット支援下手術の弱点を補うことが可能であった。