講演情報
[O28-7]局所進行直腸癌に対して術前化学放射線療法後にTpTME併用ロボット支援下腹会陰式直腸切断術、両側側方郭清、仙骨合併切除を施行した1例
豊田 尚潔, 中西 亮, 宮倉 安幸 (栃木県立がんセンター大腸骨盤外科)
症例は70代男性。下血を主訴に近医を受診され、精査の結果、直腸Rbに全周性の腫瘍性病変を認め、かつ腹部造影CT検査、造影MRI検査にて多発リンパ節腫大と仙骨S4以下に浸潤を疑う所見を認めたため、治療目的にて当センターへ紹介となった。検討の結果、術前化学放射線療法後に手術の方針とし、Long course chemoradiotherapy (Capecitabine+50.4Gy)を施行した。治療効果判定はPRであったが、仙骨S4に接する軟部影には変化が見られなかった。化学放射線療法後から12週間後にTpTME併用ロボット支援下マイルズ手術、仙骨S3/4合併切除を施行した。手術操作は2チームで開始し、ロボット手術による腹腔内操作と会陰操作を同時に進行した。腹腔内操作では仙骨S3まで背側の剥離を行なった後、両側側方郭清に移行し、S3より尾側で尿管を温存しつつ尿管下腹神経筋膜合併切除とした。仙骨切離の際の出血予防のため、両側上臀動脈分岐を確認後に内腸骨動脈本幹を結紮した。腹腔内からロボット支援下の視野で確認を行いながらTpTMEの剥離層と腹腔内の剥離層を前立腺背側・直腸腹側で交通させた。その後、8時〜4時方向までを完全に剥離した後に、体位を腹臥位として仙骨切除を行い、検体を仙骨部の創部より摘出した。骨盤内の死腔予防のため、形成外科により左前外側大腿筋皮弁の充填を行なった。術後は仙骨部の創傷治癒遅延、創離開を認めたが、デブリドマン・再縫合により軽快され、第39病日に退院となった。現在まで無再発生存中である。仙骨浸潤を疑う局所進行直腸癌に対してTpTME併用ロボット支援下マイルズ手術を施行した症例は稀であり、かつ後方浸潤のため通常のTMEが困難な症例に対して、ロボット支援下手術とTpTMEの併用は極めて有用であったため、若干の文献学的考察を交えて報告する。