講演情報
[O29-2]当院でのロボット支援大腸切除術の現状とこれから
仲本 嘉彦, 松木 豪志, 長野 心太, 古出 隆大, 一瀬 規子, 藤川 正隆, 岩崎 寿光, 中島 隆善, 岡本 亮, 生田 真一, 相原 司, 柳 秀憲, 山中 若樹 (明和病院外科)
当院では手術支援ロボットhinotoriを2023年10月に導入し、12月より直腸癌手術を開始し、2024年1月より結腸癌手術を開始した。他社製経験もなく、泌尿器でもなく、消化器外科より始めた稀な施設である。現在まで107例(直腸癌68例、結腸癌39例)のhinotoriによる大腸手術を経験した。右手にはモノポーラハサミを用い、神経周囲で過敏に反応する際は左手のバイポーラで焼灼後にコールドカットを行う。エネルギーデバイスは側方郭清が必要な直腸切除と間膜処理や大網切除が必要な結腸切除でのみ使用、クリップも助手側から行いコスト削減に努めている。結腸右半切除術では内側アプローチで開始し、回腸切離を先行して後腹膜・外側剥離を行い、肝湾曲も内側より切離するが、hinotoriでは体位変換ができないための工夫である。体腔内吻合を行い、恥骨上小切開を置くことで腹壁ヘルニアを防止している。当院ではT3以深およびN1以上の切除可能局所進行下部直腸癌には基本的にSCRT(25Gy/10fraction)を行い、腫瘍縮小が得られる約1か月の術前待機期間後に根治手術を、T4以深およびT3N2以上の局所進行下部直腸癌に対してはTNT(Total Neoadjuvant Therapy)としてSCRTの前に全身化学療induction chemotherapy(ICT)を行っており、CRTは13例、うちTNTは5例に施行した。SCRTの1か月後の手術では、線維化も著明ではなく、ロボット手術との相性が良いと感じている。前方から左右挙筋まで剥離し、後面操作を後で行うことで浸出液での視野不良を回避している。SCRTの影響で浸出液やスモークが多いためネラトンや助手の吸引が適宜必要である。ロボット支援下では十分な肛門管剥離によりDST吻合ができることも多い。術後合併症は腸閉塞2例(イレウス管1例、バイパス手術1例)、ポートサイトヘルニア1例で、ロボット手術に起因するものは認めていない。今後は若手外科医育成が必要であり、教育面ではアノテーションを用いた指導は有効であると感じている。