講演情報
[O4-3]当院における家族性大腸腺腫症術後患者に対する多臓器サーベイランスと治療の検討
中山 史崇, 森田 覚, 岡田 純一, 原田 優香, 門野 政義, 茂田 浩平, 岡林 剛史, 北川 雄光 (慶應義塾大学医学部外科学(一般・消化器))
【目的】家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis: FAP)は大腸のみならず、十二指腸癌やデスモイド腫瘍など多臓器に随伴病変を来す遺伝性疾患であり、これらの大腸外病変が主要な死因となりうる。そのため、残存大腸および大腸外随伴病変に対しての包括的なサーベイランスの重要性が認識されているが、検査状況や治療成績に関する詳細なデータは限られている。本研究では、FAP手術症例を対象に、多臓器サーベイランスの状況と関連治療についての実態を後方視的に検討した。
【方法】外科治療後に当科フォロー中であるFAP患者27名を対象にした。大腸癌未発症、外科手術未施行の症例を除外した。その多臓器サーベイランスの状況および治療につき検証した。
【結果】計27例のうち、診断時の年齢中央値は34(19-57)歳、男性14例(52%)、女性13例(48%)であった。表現型は不明を除き密生型7例(26%)、非密生型7例(26%)、減衰型2例(7%)であった。術式は大腸全摘18例(67%)、大腸亜全摘9例(33%)であり、亜全摘症例のうち4例(44%)に遺残直腸癌を認め、外科的切除を施行した。随伴病変として、十二指腸腺腫21例(78%)、胃腺腫25例(93%)、小腸腺腫4例(15%)を認めた。悪性腫瘍は十二指腸癌2例(8%)、胃癌5例(19%)に認め、全例でESDによる治癒切除が可能であった。デスモイド腫瘍は9例(35%)に認め、大腸手術から発症まで中央値19(3-34)ヶ月であり、経過観察4例(44%)、手術2例(22%)、タモキシフェン内服1例(11%)、その他2例(22%)であった。遺伝カウンセリングは12例(46%)で実施され、遺伝子検査を実施した症例は10例(38%)、血縁者のフォローに至った症例は5例(20%)であった。遺伝子検査未施行の理由として心理的・経済的な理由、ライフプランによるタイミング、治療法が変わらないなどが挙げられた。
【考察】FAP術後における大腸外随伴病変は高頻度で認められ、適切なサーベイランスの実施により早期発見・治療が可能であることが示唆された。特にデスモイド腫瘍の頻度は高く、治療法も限られており今後の課題と考えられた。複数科の連携によるサーベイランスの精度向上と遺伝カウンセリングの普及がさらに重要であると考えられた。
【方法】外科治療後に当科フォロー中であるFAP患者27名を対象にした。大腸癌未発症、外科手術未施行の症例を除外した。その多臓器サーベイランスの状況および治療につき検証した。
【結果】計27例のうち、診断時の年齢中央値は34(19-57)歳、男性14例(52%)、女性13例(48%)であった。表現型は不明を除き密生型7例(26%)、非密生型7例(26%)、減衰型2例(7%)であった。術式は大腸全摘18例(67%)、大腸亜全摘9例(33%)であり、亜全摘症例のうち4例(44%)に遺残直腸癌を認め、外科的切除を施行した。随伴病変として、十二指腸腺腫21例(78%)、胃腺腫25例(93%)、小腸腺腫4例(15%)を認めた。悪性腫瘍は十二指腸癌2例(8%)、胃癌5例(19%)に認め、全例でESDによる治癒切除が可能であった。デスモイド腫瘍は9例(35%)に認め、大腸手術から発症まで中央値19(3-34)ヶ月であり、経過観察4例(44%)、手術2例(22%)、タモキシフェン内服1例(11%)、その他2例(22%)であった。遺伝カウンセリングは12例(46%)で実施され、遺伝子検査を実施した症例は10例(38%)、血縁者のフォローに至った症例は5例(20%)であった。遺伝子検査未施行の理由として心理的・経済的な理由、ライフプランによるタイミング、治療法が変わらないなどが挙げられた。
【考察】FAP術後における大腸外随伴病変は高頻度で認められ、適切なサーベイランスの実施により早期発見・治療が可能であることが示唆された。特にデスモイド腫瘍の頻度は高く、治療法も限られており今後の課題と考えられた。複数科の連携によるサーベイランスの精度向上と遺伝カウンセリングの普及がさらに重要であると考えられた。