講演情報

[O4-4]当院におけるリンチ症候群スクリーニング体制に関する実績と課題分析

青木 沙弥佳1,2, 須田 竜一郎1, 石見 和嗣1, 近藤 尚1, 飯澤 勇太1, 瀧口 翔太1, 進藤 博俊1, 大野 幸恵1, 中臺 英里1, 岡庭 輝1, 小林 壮一1, 西村 真樹1, 片岡 雅章1, 柳澤 真司1, 海保 隆1 (1.君津中央病院, 2.亀田総合病院)
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【背景】リンチ症候群(LS)は大腸癌の約2~3%を占め、生殖細胞系列MMR遺伝子変異に起因する. 発端者と家族の二次予防には, 大腸癌全例に対するMSI/MMR スクリーニングが国際標準だが, 国内実臨床での運用状況は施設間格差が大きい. 当院では改訂ベセスダ基準に基づく選択的スクリーニングを採用し, 本研究では2022年1月〜2024年12月に診断された連続761例(779病変)を対象に, 有効性と課題を後方視的に検証した.【方法】書面同意取得後, 家族歴問診票で, 第一・第二親等の血族および関連腫瘍歴を聴取し一次スクリーニングを実施. 一次該当例には担当医がMLH1/MSH2/MSH6/PMS2免疫組織化学染色またはMSI解析を行う二次スクリーニングを施行. MMR欠損またはMSI-H例には遺伝性腫瘍専門医と認定遺伝カウンセラーが家系図作成・非指示的カウンセリング後, MMR関連遺伝学的検査でLS確定診断を施行. 解析指標は①Stage別・治療別のMMR/MSI検査実施率とdMMR検出率, ②基準該当例の検査漏れ率, ③各医師の依頼件数と陽性率でχ²検定にて検討.【結果】二次スクリーニング実施率は38.8%, Stage0は4.4%, Stage1は29.5%と低迷. Stage2では40.4%の実施率ながら,dMMR検出率6.7%と最高値であった.Stage4は60.0%実施するも陽性率1.8%にとどまった. 改訂ベセスダ基準該当192例の50.5%が未検査で, dMMR陽性13例中38%は基準非該当例から発見された.検査依頼は上位2医師に38%が集中し, 外科手術群50.0%, 内視鏡群3.1%と主治療法間で大きな差を認めた.dMMR/MSI-H例23例中(内BRAF変異4例), 9例に遺伝カウンセリングが施行され, 6例に遺伝子検査を実施. 最終的に2例に病的バリアントを同定.【考察・結果】選択的スクリーニングは早期癌や救命手術群の検査抜けが顕著で, 家族発症予防の機会損失が生じていた. 観察期間が短いため化学療法中の症例も多く, 今後2次検査・カウンセリング実施者が増える可能性は残るが, 検査依頼が特定医師に偏り治療法間で実施率に乖離がある現状は, 組織的・網羅的なLSスクリーニング体制が確立していない事を示唆する. 今後は部門横断的連携, 継続的な教育啓発活動を含む多角的アプローチによる体制強化が求められる.