講演情報

[O6-2]腹腔鏡・ロボット支援下結腸癌手術における体腔内吻合の治療成績

吉田 直裕, 髙木 健太, 髙松 正行, 久田 かほり, 古賀 史記, 仕垣 隆浩, 藤吉 健司, 大地 貴史, 吉田 武史, 主藤 朝也, 藤田 文彦 (久留米大学外科学講座)
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背景:大腸癌手術では腹腔内汚染や腫瘍散布を回避するため体腔外吻合が基本であるが、腫瘍の部位・癒着・体格により体外へ腸管を誘導するために広範囲な授動が必要となる症例もある。体腔内吻合は腸管の剥離授動範囲が少なくてすむため体腔外での吻合が困難な症例に対して有効な吻合法であるが、手術成績や長期予後についてはまだ十分な報告はない。そこで今回、当院の体腔内吻合の短期・長期成績について検討した。
方法:当科で2017-2024年に腹腔鏡もしくはロボット支援下手術により根治手術を行ったStageⅠ-Ⅲの結腸癌38例の臨床的特徴を明らかにし、体腔外吻合366例とpropensity score matching(PSM)を行い短期・長期成績について比較検討した。
結果:体腔内吻合の症例は右側結腸癌:26例・左側結腸癌:12例であった。術前深達度診断はcT1:21例・cT2:13例・cT3:4例、BMI:25以上の肥満症例は10例であった。ロボット支援下手術が7例で腹腔鏡下手術が31例であった。術式は、回盲部切除19例・結腸右半切除4例、結腸部分切除10例・S状結腸切除5例であった。体腔内吻合の吻合法は、overlap法:33例、機能的端々吻合:5例であった。PSM前では体腔内吻合群は右側結腸に多く(p=0.004)、pT3以上(p<0.001)やリンパ節転移陽性(p=0.003)の症例が少なかった。PSMを行いマッチした両群38例ずつを比較したところ、手術時間は体腔内吻合群で長かった(p=0.012)。体腔内吻合でPfannenstiel切開は12例に行ったが、Pfannenstiel切開を行った症例では腹壁瘢痕ヘルニアの発生はなく、全例正中小切開を行った体腔外吻合群と比較し有意に少なかった(p<0.0001)。出血量(p=0.129)・術後在院日数(p=0.235)について有意差はなく、Cox比例ハザードモデルによる長期成績についても体腔内吻合は再発・生存ともに予後不良因子とならなかった(p=0.147,p=0.196)。
結語:体腔内吻合は手技の時間短縮が課題であるが、治療成績については体腔外吻合と遜色はなかった。体腔内吻合はPfannenstiel切開を行うことで術後疼痛や腹壁瘢痕ヘルニアの発生を減らせる利点もあり選択肢の一つとなりうる。