講演情報

[O6-7]短時間で共通孔を手縫い閉鎖するオーバーラップ法による体腔内吻合の短期・長期成績

渋谷 雅常1, 丹田 秀樹1, 大森 威来1, 福井 康裕1, 西山 毅1, 小澤 慎太郎1, 米光 健1, 関 由季1, 笠島 裕明1, 西村 潤也2, 井関 康仁2, 福岡 達成2, 西居 孝文2, 前田 清1 (1.大阪公立大学消化器外科, 2.大阪市立総合医療センター外科)
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背景:結腸癌手術における体腔内吻合は授動範囲が最小限で済むことなどメリットも多いが、一方で手術時間の延長や腹腔内で消化管を開放することに伴う感染や播種のリスクも懸念される。我々は以前より両端針有棘縫合糸を用いた短時間での共通孔閉鎖手技を報告してきたが、現在では体腔内吻合の手技全体を定型化することで、外科専攻医が助手であったとしてもスピーディーな再建が可能となっている。今回、当科での定型化された手技を動画で供覧するとともに、その短期・長期成績を報告する。
対象:ロボット支援下結腸癌手術を施行した52例のうち共通孔を両端針有棘縫合糸で手縫い閉鎖するオーバーラップ法で体腔内吻合を行った39例を対象とした。全ての症例に機械的・化学的前処置を施行した。リニアステイプラーに関して導入初期は術者が操作していたが、現在では助手が操作する手技で定型化している。標本の摘出は臍部の創から行っている。
結果:定型化後の小孔作成から吻合までの時間の中央値は4分41秒(4分36秒-5分1秒)、共通孔閉鎖に要する時間の中央値は11分56秒(7分19秒-17分32秒)であった。短期成績に関して、縫合不全は1例も認めず、腹腔内の炎症遷延が2例に、ポート創感染が1例に認められるのみであった。観察期間はそれほど長くないものの長期成績に関して、吻合部狭窄、正中創の腹壁瘢痕ヘルニア、腹膜播種を含む再発は1例も認めていない。
考察:共通孔を手縫い閉鎖する手技はステイプラーで閉鎖する手技と比較して、確実な全層縫合が可能なため体腔内吻合導入早期でも縫合不全のリスクが低く、また全層縫合を意識するあまり狭窄をきたすという不安も少ない。また、共通孔の閉鎖前に共通孔の遠位端に支持糸をかけ吊り上げることを定型化しているが、これにより消化液の漏出を防ぐことが可能となる。さらに消化管の開放時間を最小限にするため手技や使用する物品を工夫し定型化することにより、術後の感染性合併症を最小限にとどめることが可能であると考えられた。
結語:当科で定型化している共通孔を手縫い閉鎖するオーバーラップ法による体腔内吻合は合併症も少なく有用な手技であると考えられた。