講演情報
[O7-3]肛門外科初診後クローン病(CD)の診断がついた症例の検討
田中 玲子1, 宮﨑 道彦2,3, 山田 真美2, 高橋 佑典3, 河合 賢二3, 德山 信嗣3, 加藤 健志3, 平尾 素宏3 (1.医療法人どうじん会道仁病院大腸肛門病センターIBD外来, 2.医療法人どうじん会道仁病院大腸肛門病センター外科, 3.国立病院機構大阪医療センター消化管外科)
【はじめに】当院は年間約500件の肛門の手術を行っている。その中で肛門症状を主訴に受診され、後にCDと診断される患者が一定数いることから、2016年3月よりIBD外来を設立した。以後2025年3月までで22例のCD患者をIBD外来、肛門外科で連携し診療を行っている。それらを後方視的に臨床検討した。【患者】初診時年齢12歳から45歳、中央値20歳、男性20例女性2例。【初診時の症状】疼痛19例、腫脹13例、出血12例、分泌物11例(重複あり)。肛門狭窄のため便意頻回の訴えが1例あった。下痢を11例に認めた。体重減少を主訴に挙げる症例はなかったが、問診で8例に認めた。【肛門手術歴】IBD外来へ紹介される前に肛門手術を行ったものは19件(14例)、手術なしは8例(36%)であった。肛門手術は全例ドレナージ術(ドレーン有り8件)で裂肛、痔瘻根治術はなかった。【CDの診断経緯】下部消化管内視鏡検査(TCS)での診断は18例(82%)、それ以外は上部消化管内視鏡検査、小腸内視鏡検査(カプセルまたはダブルバルーン)、痔瘻部の非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の検出で診断した。【IBD外来での経過】全例全消化管の検査を施行、疾患活動性(CDAI)を評価し、150未満が13例、軽症5例、中等症4例であった。CDAIが低くても診断時すでに小腸狭窄を有する症例が3例あった。ほとんどの症例で生物学的製剤(bio)を導入した(18例(82%))。年齢、多発あるいは深部痔瘻、腸管病変の範囲、CDAI、狭窄病変の有無に加えて患者本人の性格、通院頻度などを考慮しいずれのbioを選択するかを決定した。経過中痔瘻の二次口閉鎖や裂肛の瘢痕化を12例(約55%)に認めた。bioの一次あるいは二次無効で肛門病変の増悪を見た際には肛門外科へ再度紹介し、必要に応じて再ドレナージ術を施行した後治療強化、bioスイッチを行った(2例(9%))。【結語】CDの肛門病変は内科外科の連携診療が欠かせない。若年の肛門病変はCDの病変の可能性があるため、慎重な経過観察が必要で、ドレナージ術を行っても根治術は施行せず、速やかにTCSを初めとする精査が必要である。また、治療経過中肛門病変の悪化を見た際には早めにドレナージ、可能なら治療強化やbioスイッチを行う。