講演情報

[O7-4]Crohn病に対する生物学製剤の各種臨床病変に対する効果と副作用からみた治療方針の検討

杉田 昭, 黒木 博介, 後藤 晃紀, 小原 尚, 中尾 詠一, 齋藤 紗由美, 小金井 一隆, 荒井 勝彦, 辰巳 健志 (横浜市立市民病院炎症性腸疾患科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】Crohn病治療には現在、分子標的薬が多く使用される。治療はtreat to targetの概念に基づいて各種の臨床病変に対する改善を目的として行われることが必要であり、今回はその治療効果を検討した。
【対象】抗TNFα抗体製剤を主とする生物学的製剤による治療を当科で開始し、6カ月以上経過した症例のうち、今回集計した239例を対象とした。初回投与からの観察期間は平均59カ月、投与継続期間(手術症例は手術時まで)は平均36か月であった。使用前の手術歴は83%、免疫調節薬併用は30%で、開始時の製剤はIFX49%、IFX BS14%、ADA36%、UST1%であった。治療対象とした臨床病変(重複を含む)は難治性病変(著しい狭窄、瘻孔を伴わない活動性病変)が113例、内瘻2例、腸管皮膚瘻44例、腸管出血後10例、難治性痔瘻を主とする難治性肛門病変15例、seton術後再発痔瘻7例、腸管切除後再発予防44例であった。
【方法】治療効果の判定は経過中の手術施行の有無、画像検査所見、外瘻では閉鎖の確認で行った。
【結果】1)投与法:投与量増量、期間短縮、製剤変更などの使用法の変更が36%の症例で行われた(最終:IFX24%、IFX BS11%、ADA57%、UST7%、VED1%)。2)治療効果:効果がなく手術施行例は44%で、主な手術適応は狭窄が36%、腸管皮膚廔および内瘻33%、難治性病変20%であった。最終的な各種臨床病変に対する有効率は、難治性病変が41%、内瘻33%、腸管皮膚瘻32%、腸管出血後75%、難治性肛門病変27%、seton術後再発痔瘻33%であった、腸管切除後再発予防投与例の累積再手術率は38か月で30%であった。3)副作用:15%で、主な副作用はinfusion reaction が18例、肺炎6例、肺結核4例、腸閉塞2例であった。
【結語】Crohn病に対する抗TNFα抗体製剤を主とする生物学的製剤の臨床病変に対する有効率は治療対象病変として多くを占めた難治性病変(著しい狭窄、瘻孔を伴わない活動性病変)、腸管瘻でそれぞれ約40%、30%と低かった。本剤の効果判定は臨床症状だけでなく各種病変の改善を画像検査で客観的に行う必要があり、改善の見られない病変に対しては手術を含めた他の治療法に早期に移行する必要がある。