講演情報
[O7-6]クローン病関連直腸肛門部癌の治療成績と課題
荻野 崇之1, 関戸 悠紀1, 深田 晃生1, 辻 嘉斗1, 竹田 充伸1, 波多 豪1, 浜部 敦史1, 三吉 範克1, 植村 守1, 水島 恒和2, 土岐 祐一郎1, 江口 英利1 (1.大阪大学大学院医学系研究科消化器外科, 2.獨協医科大学下部消化管外科)
【はじめに】クローン病(Crohn’s disease:CD)の患者数増加に伴い、慢性炎症を背景とするCD関連大腸癌の発症が増加している。本邦においては、CD関連癌の約8割が直腸肛門部に発生する。治療の基本は外科的切除であるが、肛門周囲の高度な線維化や複雑痔瘻の合併により、腫瘍と炎症性瘢痕の境界同定が困難となることが多く、断端陽性率が30%に達するとの報告もある。今回、当院におけるCD関連直腸肛門部癌に対する手術治療の成績とその課題について検討を行った。
【対象と方法】2012年から2024年の間に、当院で手術を施行したCD関連直腸肛門部癌19例を対象とし、臨床病理学的背景、治療内容、術後経過について後方視的に検討した。各値は中央値(範囲)で示した。
【結果】対象は男性16例、女性3例、手術時年齢は48.5歳(37~71)、CD罹病期間は23年(18~34)であった。腸管切除の既往は14例に認めた。診断契機は、肛門部症状が12例、サーベイランスによる発見が6例、偶発的発見が1例であった。術前に化学放射線療法(CRT)を施行した症例は7例であった。施行術式は直腸切断術10例、骨盤内臓全摘術6例、大腸全摘術2例、局所切除1例であった。併施術式としては、側方郭清10例、筋皮弁再建を伴う広範会陰切除6例、仙骨・尾骨合併切除3例が含まれた。手術時間は698分(45~1141)、出血量は550ml(0~8050)であった。術後合併症としては会陰部SSIが最多で6例に認められ、Grade 3以上の合併症は3例であった。病理組織型は粘液癌(mucinous carcinoma)が13例、腺癌(tub1)が3例、扁平上皮癌(SCC)が1例、異形成(dysplasia)が1例であった。切除断端評価は、R0が17例、R1が2例であり、CRT施行例は全例でR0切除が達成されていた。術後補助化学療法を施行した症例は4例であった。術後フォロー中にCDの病勢増悪を認め、生物学的製剤を再開した症例は3例あった。再発は6例に認められ、再発部位は局所3例、骨3例、肺1例、腹膜1例(重複あり)であった。
【まとめ】CD関連直腸肛門部癌に対しては、診断精度の向上、拡大手術における適切な切除範囲および再建術式の選択、周術期治療が重要な課題であると考えられた。
【対象と方法】2012年から2024年の間に、当院で手術を施行したCD関連直腸肛門部癌19例を対象とし、臨床病理学的背景、治療内容、術後経過について後方視的に検討した。各値は中央値(範囲)で示した。
【結果】対象は男性16例、女性3例、手術時年齢は48.5歳(37~71)、CD罹病期間は23年(18~34)であった。腸管切除の既往は14例に認めた。診断契機は、肛門部症状が12例、サーベイランスによる発見が6例、偶発的発見が1例であった。術前に化学放射線療法(CRT)を施行した症例は7例であった。施行術式は直腸切断術10例、骨盤内臓全摘術6例、大腸全摘術2例、局所切除1例であった。併施術式としては、側方郭清10例、筋皮弁再建を伴う広範会陰切除6例、仙骨・尾骨合併切除3例が含まれた。手術時間は698分(45~1141)、出血量は550ml(0~8050)であった。術後合併症としては会陰部SSIが最多で6例に認められ、Grade 3以上の合併症は3例であった。病理組織型は粘液癌(mucinous carcinoma)が13例、腺癌(tub1)が3例、扁平上皮癌(SCC)が1例、異形成(dysplasia)が1例であった。切除断端評価は、R0が17例、R1が2例であり、CRT施行例は全例でR0切除が達成されていた。術後補助化学療法を施行した症例は4例であった。術後フォロー中にCDの病勢増悪を認め、生物学的製剤を再開した症例は3例あった。再発は6例に認められ、再発部位は局所3例、骨3例、肺1例、腹膜1例(重複あり)であった。
【まとめ】CD関連直腸肛門部癌に対しては、診断精度の向上、拡大手術における適切な切除範囲および再建術式の選択、周術期治療が重要な課題であると考えられた。