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[O8-1]当科における臨床的側方リンパ節転移陽性の下部進行直腸癌に対する治療成績

平田 篤史, 大平 学, 丸山 哲郎, 栃木 透, 岡田 晃一郎, 丸山 通広 (千葉大学先端応用外科)
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【はじめに】
本邦では直腸癌の側方リンパ節転移陽性症例(LLN+)に対しては、TME+側方リンパ節郭清(LLND)が標準治療であるが、術後再発リスクは依然として高い。LLN+を含めた局所進行直腸癌(LARC)に対して、術前化学放射線療法 (CRT)の局所制御効果が多くの報告で示されている。当科では、cLLN+(CT/MRIで短径5mm以上、PET-CTで異常高集積あり)に対して、原則として術前CRTを施行している。LLNDについては、術前CRT施行例では腫大側のみ郭清する選択的側方郭清を行っている。今回、当科における治療前にcLLN+と診断されたLARCの治療成績を検討した。
【対象と方法】
2005年7月より2024年12月までに当科で手術を施行した、cT3以深またはcN陽性のLARC 228例のうち、治療前にcLLN+と診断され、遠隔転移を認めず根治切除が可能であった47例を対象とした。これらの症例の全生存期間率(OS)、無再発生存率(RFS)、累積局所再発率(LRR)について検討を行った。
【結果】
年齢中央値 64(30-86)歳、男女比 31:16。術前治療なし 11例、術前CRT 31例、TNT 5例であり、pLLN+は17例(36.2%)であった。
pLLN+の予後は、5yOS 66.7%、5yRFS 29.3%、5yLRR 24.0%であり、pLLN-の5yOS 92.4%、5yRFS 76.7%、5yLRR 6.7%と比較して、極めて予後不良であった。
術前治療別に予後を検討したところ、術前治療なし群(11例)では、5yOS 81.8%、5yRFS 68.2%、5y LRR 24.2%であり、術前CRTまたはTNT群(36例)では、5yOS 83.2%、5yRFS 57.7%、5y LRR 8.9%と、術前CRTを施行した方が局所制御良好であった。
【まとめ】
cLLN+のLARCにおいて、術前CRTを施行することで局所再発リスクを減少させる可能性を認めたが、遠隔制御も含めた予後改善には限界がある。また、pLLN+は極めて予後不良であり、化学療法を組み合わせた集学的治療が必要であると考える。