講演情報

[O8-6]化学放射線療法後の直腸癌に対する選択的側方郭清と治療成績

白石 卓也, 清水 祐太朗, 遠藤 瑞貴, 細井 信宏, 塩井 生馬, 片山 千佳, 柴崎 雄太, 小峯 知佳, 岡田 拓久, 大曽根 勝也, 木村 明春, 佐野 彰彦, 酒井 真, 調 憲, 佐伯 浩司 (群馬大学大学院医学系研究科総合外科学講座)
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背景:当院では直腸癌に対して術前化学放射線療法(CRT)を行うことで予防的側方郭清を省略してきた。一方、治療前に側方リンパ節(LLN)腫大を認めた症例に対しては腫大側の治療的側方郭清を行っている。
目的:直腸癌に対する術前CRT後の側方郭清の有無とその治療成績を明らかにする。
方法:2013年6月から2024年8月に腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にあるcT3以深の直腸癌でCRTによる術前治療後に根治切除を予定した61例を対象に、側方郭清あり群(郭清群)と側方郭清なし群(省略群)の短期および長期治療成績を後方視的に比較検討した。
結果:年齢中央値(範囲)は62歳(23-79歳)で、男性49例(80.3%)、女性12例(19.7%)だった。郭清群は19例(31.1%)で、省略群は42例(68.9%)だった。郭清群は省略群と比べて手術時間は長かったが(p=0.031)、出血量(p=0.913)やCavien-Dindo分類gradeIII以上の合併症(0.146)、術後在院日数(p=0.743)に有意差を認めなかった。郭清群のうち、LLN転移を認めた症例は8例(42.1%)で、片側郭清は13例(68.4%)に施行していた。また、治療的側方郭清として、LLNとともに内腸骨血管系や骨盤内神経を13例(68.4%)に合併切除していた。郭清群の局所再発は3例で、仙骨前面に2例、郭清後のLLN領域に1例の再発を認めた。省略群の局所再発は2例で、前立腺背側に1例、吻合部に1例と、省略したLLN領域に再発を認めなかった。観察期間の中央値(範囲)は29ヶ月(2-113ヶ月)で、郭清群と省略群の3年無再発生存割合(68.0% vs 69.0%, p=0.921)と3年全生存割合(87.5% vs 92.8%, p=0.696)に有意差を認めなかった。
結語:直腸癌に対して術前CRTを行うことで、治療前にLLN腫大を認めないLLN領域に対して側方郭清を省略することができ、その一方で治療前にLLN腫大を認めたLLN領域に対しては症例に応じて内腸骨血管系や骨盤内神経の合併切除を伴う治療的側方郭清による確実な側方郭清が重要である。