講演情報

[O8-7]直腸癌局所再発症例に対する側方郭清の意義について

楠 誓子, 植村 守, 草深 弘志, 大崎 真央, 関戸 悠紀, 竹田 充伸, 波多 豪, 浜部 敦史, 荻野 崇之, 三吉 範克, 江口 英利, 土岐 祐一郎 (大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学)
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背景
直腸癌局所再発(LRRC)症例では拡大手術を要することが多いが、当施設では郭清だけでなく血管走行を確認し安全に手術を行うために、初回手術時側方郭清非施行症例に対して原則として側方郭清(LLND)を追加している。骨盤内LRRC手術時の側方リンパ節の転移陽性率に関する報告は認めないため、本発表ではLRRC症例に対するLLNDの意義についてretrospectiveに検討する。
対象
2010年1月から2022年2月までに、182例のLRRC症例に対して手術を施行した。術前診断が側方リンパ節転移再発の33例を除いた149例のうち、病理標本の提出の際に原発巣と一塊にして提出しているため病理学的な検索が不十分な症例を除いた70症例について検討を行った。70症例の背景は、男性/女性がそれぞれ52/18例、再発手術時の年齢の中央値は61.5(31-85)歳、BMIは21.7(15.9-31.6)、ASA-PS≧3は5例であった。術前治療施行例は58例、初回手術時の原発巣は上部直腸/下部直腸/不明が30/35/5例、初回手術時のpStageは0-II/III-IV/不明が38/30/2例であった。術式に関しては腹腔鏡/開腹がそれぞれ52/18例であり、他臓器合併切除を伴うものが62例、仙骨合併切除を行ったものが36例であった。手術時間の中央値は723.5(348-1300)分で、出血量の中央値は765(0-17930)mlであった。また、Clavien Dindo分類Grade3以上の術後合併症は31例で認め、術後在院期間の中央値は41(15-253)日であった。70例のうち、側方リンパ節転移陽性となったものは7例、10%であった。側方リンパ節転移陽性/陰性群で、R0切除率(p=0.7043)、術後治療の有無(p=0.6903)に有意差は認めなかった。側方リンパ節転移陽性/陰性群で3年生存率は57.1/70.4%(p=0.2389)、3年局所無再発生存率は51.4/62.1%(p=0.3294)と有意差を認めなかった(観察期間の中央値:35ヶ月)。
まとめ
LRRC症例において、一定の頻度で側方リンパ節転移陽性例が存在しており、LRRC症例の術式検討の際には留意すべきであると考えられた。