講演情報
[O9-2]一時的人工肛門造設および閉鎖術における当院での手技の工夫と合併症の検討
須藤 有, 旗手 和彦, 鶴丸 裕司, 桑野 絋治, 大越 悠史, 大泉 陽介, 坂本 友見子, 森谷 宏光, 二渡 信江, 金澤 秀紀 (国立病院機構相模原病院外科)
<諸言>直腸癌や憩室穿孔等に対し一時的人工肛門造設が行われるが、管理面の課題、ストマ関連合併症、人工肛門閉鎖術後の創部感染が問題となる。<目的>人工肛門造設と人工肛門閉鎖術の手術手技や合併症について検討し、当科の治療方針の妥当性を明らかにする。<方法>2020年4月~2025年4月に一時的人工肛門造設を施行した後に人工肛門閉鎖術を受けた39例を対象とした。<結果>一時的人工肛門は、全例双孔式回腸人工肛門であった。男:女 11:28、年齢中央値69歳(40−84)であった。原疾患は直腸癌27例、S状結腸憩室症5例、S状結腸癌2例、S状結腸穿孔2例、右側結腸癌3例であった。人工肛門造設から閉鎖術までの期間(中央値)は105日(35−322)、閉鎖術後在院期間(中央値)は9日(8−22)であった。人工肛門造設術はストマサイトマーキングを施行し、皮膚-腹膜経路が垂直になるよう留意している。口側と肛門側の比率は4:1とし、口側腸管は原則足側としている。腹直筋前鞘に固定は行わず真皮のみに固定し、肛門側腸管はスキンレベルで固定する。人工肛門閉鎖術は、まずストマ周囲の皮膚をポピドンヨードで消毒しストマを腹腔内に押し戻し皮膚を縫合閉鎖する。その後同部位周囲をイソジンスクラブにて消毒したのちに拭浄し、再度ポピドンヨードで消毒を行う。腸管吻合後創部を生理食塩水で加圧洗浄を行い、皮下に持続的陰圧ドレーンを留置し3層で創閉鎖を行なう。人工肛門造設後合併症は排便障害1例、排便過多1例、閉鎖術後合併症は腸管蠕動障害6例、下血1例、抗菌剤起因性腸炎1例)を認めた。創感染は認めなかった。<考察>ストマ造設時は単孔式ストマに近い形になりストマ装具はプレカット面板の使用することで患者のセルフケアが簡便化した。一方で視認性の低下による誤装着が散見された。一時的人工肛門造設および人工肛門閉鎖術の手術手技の工夫により術後合併症の低減や患者のQOL維持が可能であった。<結語>当科の人工肛門造設および閉鎖術の治療方針は妥当であった。今後は安全で確実なストマ管理体制の構築のため視認性改善と術後指導の工夫が求められる。