講演情報

[O9-5]全国の労災病院における大腸癌患者に対する治療と仕事の両立支援の取り組み

神山 博彦 (労働者健康安全機構東京労災病院外科)
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【背景】「治療と仕事の両立支援」は社会が取り組むべき課題として働き方改革実行計画に掲げられたほか、がん対策基本法にも盛り込まれている。全国の労災病院では「治療と仕事の両立支援」の医療機関における実践に取り組んできた。癌患者はいまだに離職率が高いうえ、大腸癌には人工肛門や集学的治療などがあり就労継続に際して支援が必要になることが多い。本検討では大腸癌患者に対する労災病院での両立支援について現状を報告する。【対象】2013年3月から2024年9月までの間に全国の労災病院で治療と仕事の両立支援を受けた患者のうちデータベース登録に同意が得られている症例を対象とした。【結果】癌患者に対する両立支援介入878例のうち、消化器癌は39%と最も多く、以下、乳癌30%、肺癌11%、婦人科癌6%、泌尿器癌4%などであった。復職率は癌全体で72%、消化器癌は68%、乳癌85%、肺癌60%、婦人科癌69%、泌尿器癌68%であった。消化器癌の内訳は直腸31%、胃24%、結腸23%、膵11%、肝5%、食道3%などとなっていた。手術率・化学療法率は直腸癌81%・61%、結腸癌78%・59%であった。直腸癌の放射線治療率は7%であった。人工肛門造設率は直腸癌40%、結腸癌12%であった。復職率は直腸癌76%、結腸癌78%であった。復職までの日数(中央値)はストマありが49.5日、ストマなしが22日となっており、復職率はストマありが81%、ストマなしが75%となっていた。【考察】直腸・結腸癌は消化器癌の両立支援介入例で最も多い。集学的治療や人工肛門造設といった侵襲の大きな治療があるが、人工肛門造設は離職率には影響していなかった。【結語】大腸癌に限らないが、治療と仕事の両立支援が医療機関で受けられるようになることが望まれる。