講演情報
[P1-2]潰瘍性大腸炎に併発した難治性サイトメガロウィルス腸炎に対して外科的切除標本にてびまん性B細胞悪性リンパ腫と診断された一例
多代 尚広1, 花井 恒一1, 廣 純一郎2, 伊東 昌広1, 加藤 悠太郎1, 加藤 宏之1, 荒川 敏1, 志村 正博1, 小池 大助1, 東口 貴彦1, 国村 祥樹1, 谷 大輝1, 堀口 和真1, 堀口 明彦1 (1.藤田医科大学ばんたね病院, 2.藤田医科大学病院総合消化器外科)
患者は70歳代男性。7年前に下痢、血便、腹痛を主訴に当院消化器内科を受診し、全大腸炎型潰瘍性大腸炎(UC)およびサイトメガロウイルス(CMV)腸炎と診断された。治療により軽快し外来で経過観察を継続していたが、寛解と増悪を繰り返し、ステロイド、アザチオプリン、ベドリズマブによる内科的治療が行われていた。3ヶ月前に定期的なフォローアップとして施行されたCTにてS状結腸の壁肥厚および周囲脂肪織濃度の上昇を認めた。下部内視鏡検査では、S状結腸に全周性の多発潰瘍を認めたが、それ以外の部位では縦走潰瘍の瘢痕は見られるものの、活動性の炎症所見は乏しかった。悪性腫瘍の可能性も考慮し複数回生検を行ったがいずれも悪性所見はなかった。血液検査や免疫染色にてCMV陽性であであったためCMV腸炎と診断しガンシクロビルにて加療した。UCとしても加療を行ったが、血液検査で炎症は遷延し経口摂取により発熱をきたすため難治性C M V腸炎として当科に紹介となった。発熱の増悪を認めたため再度CTを施行するとS状結腸穿通と膿瘍形成、さらに麻痺性イレウスを認めた。腹腔鏡下全結腸切除・回腸人工肛門造設術を施行した。病理検査ではS状結腸の潰瘍性病変に全層性の高度の上皮びらん、壊死、壁構造の破壊を認め、内部には多彩な炎症細胞浸潤とともに核形が不整な異型細胞のびまん性増殖を認めた。免疫染色でCD20(+)、CD3(−)、CD4(−)、CD7(−)、CD56(−)、EBER-ISH(+)でありびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断された。UCとCMV腸炎と合併した悪性リンパ腫の報告は少ない。潰瘍性大腸炎に対するチオプリン製剤や免疫抑制剤の投与はDLBCLなどのEBウィルス感染に関連した悪性リンパ腫のリスクを高めると報告されている。今回の症例はEBウィルスに関連したDLBCLと診断されたが、術前の生検では悪性所見が得られずC M V腸炎との鑑別が困難であった。文献的考察を含め報告する。