講演情報

[P10-4]当院における結腸癌術後麻痺性イレウスの予測因子に関する検討

筋野 博喜, 笠原 健大, 水谷 久紀, 福島 元太郎, 久保山 侑, 田子 友哉, 真崎 純一, 岩崎 謙一, 古賀 寛之, 金沢 景繁, 永川 裕一 (東京医科大学消化器・小児外科学分野)
PDFダウンロードPDFダウンロード
[背景]
術後麻痺性イレウスは腹部手術の合併症の一つであり、術後経過に大きな影響を与えるため、適切な対応が求められる。予測因子については様々な報告がされているものの、未だ確立したものはない。本研究は、大腸癌に対する結腸切除術後の術後麻痺性イレウスのリスク因子について検討した。

[対象・方法]2021年1月から2023年5月に東京医科大学病院にて結腸癌pStageⅠ~Ⅲに対し根治手術を施行した192例を対象とし、後方視的に解析を施行した。本研究では術後イレウス管・胃管を挿入した症例、術後7日以内に症状(嘔吐)を呈したものの絶食管理で改善した症例を麻痺性イレウスと定義した。解析にはχ2検定・多変量ロジスティック解析を用い、カットオフ値はROC曲線で決定した。術中輸液量としてINDEX=術中IN-OUT(ml)/体重(kg)/時間(hr)を使用し解析した。

[結果] 麻痺性イレウス群19例・非麻痺性イレウス群173例であった。患者背景は男性/女性:84/108、INDEX<9.68 / ≥9.68:133/59、手術時間<222 / ≥222:95/97、出血量<55 / ≥55:124/68、CAR<0.073 / ≥0.073:97/95、であった。単変量解析では、出血量(≥55・0.042)、手術時間(≥222・p=0.013)、INDEX(≥9.68・p=0.037)、手術翌日CRP(≥6・p=0.004)、CAR(<0.073・p= 0.031)、PLR(<200・p= 0.024)、PNI(<49・p= 0.011)に有意差を認めた。多変量解析において、INDEX (HR: 6.59 ; 95%CI : 1.760 - 24.70; p= 0.005)、手術時間 (HR: 9.6; 95%CI: 2.070 - 44.50、p= 0.003)、手術翌日CRP (HR: 3.76; 95%CI: 1.210 - 11.70、p= 0.022)が独立した予後因子であった。

[結論] 術中INDEXが高い症例・長時間手術・術後炎症反応上昇は術後麻痺性イレウスの予測因子となる可能性が示唆された。手術因子に加えて、術中輸液管理に注意すべきことが示唆された。