講演情報

[P10-5]腹腔鏡手術とロボット手術での術後乳び腹水発症頻度についての比較

市原 もも子1,2, 小森 孝通1, 笹生 和宏2, 岸 健太郎1, 橋本 和彦1, 住本 知子1, 遠矢 圭介1, 大久保 聡1, 麻本 翔子1, 加藤 雅也1, 吉野 力丸1, 早瀬 志門1, 福永 睦1 (1.兵庫県立西宮病院, 2.笹生病院)
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【背景/目的】ロボット支援手術は、2018年に直腸切除・切断術に対して保健適応となって以降、症例数は飛躍的に増加している。また短期成績のみならず長期成績においてもロボット手術の方が良好であるという報告がなされてきている。当院においてもロボット手術症例が増加してきているが、ロボット手術はモノポーラーで手術を完遂することが多いためか、術後乳び腹水を認めることがあるため腹腔鏡手術とロボット手術での乳び腹水の発症頻度を比較することとした。また、ロボット手術における乳び腹水を起こさないための工夫点について考察することとした。【対象・方法】2020年1月から2024年12月までに当院において、非緊急・R0・D2もしくはD3郭清を伴うS状結腸切除術・ハルトマン手術・高位前方切除術・低位前方切除術・超低位前方切除術・腹会陰式直腸切断術を腹腔鏡もしくはロボット手術で行った症例において、術後乳び漏の発症有無について検討した。【結果】腹腔鏡手術は126症例(S切;64例/ハルトマン;5例/AR;31例/LAR;15例/sLAR;5例/APR;6例)、男性;63/女性:63例、年齢中央値は74歳、BMI中央値は22.8、pStage0;1/I;34/II;52/III;39例であった。ロボット手術は68例(S切;4例/ハルトマン;5例/AR;13例/LAR;24例/sLAR;14例/APR;8例)、男性;41/女性;27例、年齢中央値は73歳、BMI中央値は21.6、pStage0;4/I;20/II;22/III;22例であった。術後乳び腹水は、腹腔鏡手術で2例(1.59%)、ロボット手術で6例(8.82%)であり有意にロボット手術における発生頻度が高かった(p<0.05)。【考察】術後乳び腹水は、食事再開の遅れや低脂肪食などといった食事内容の変更に繋がる可能性がある。ロボット手術で腹腔鏡手術と比較して発症率が高い原因としては、モノポーラー手術により手術完遂することが多くリンパ管のシーリングが足りていない可能性がある。術中にIMA根部周囲などリンパ管と考えられる脈管を認める場合には、しっかりと認識しバイポーラーで凝固後に切離することが乳び漏予防に繋がる可能性があると考えられる。