講演情報

[P10-7]AIによる言語解析を用いた術後合併症予測の検討

春名 健伍1,2, 三吉 範克1,2, 藤野 志季1,2, 関戸 悠紀1, 竹田 充伸1, 波多 豪1, 浜部 敦史1, 荻野 崇之1, 植村 守1, 土岐 祐一郎1, 江口 英利1 (1.大阪大学大学院医学系研究科外科系臨床医学専攻外科学講座消化器外科学, 2.地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンターがん医療創生部)
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【はじめに】本邦において大腸癌は年間約15万人が新たに診断され、男女ともに癌死亡原因の上位を占め、外科的切除は進行大腸癌の根治的治療の中心であり、患者の予後を大きく左右する。術後合併症のリスク評価には、P-POSSUM、Colorectal POSSUM、E-PASSなどのスコアリングシステムが用いられているが、これらのスコアは主に手術関連因子や患者の生理学的指標を基に算出され、患者の術前術後の主観的訴えを考慮できていない。近年、人工知能(Artificial Intelligence: AI)の進歩は著しく、当グループでもこの分野の研究を行なっている。今回我々は、患者の術前術後の訴えから、AIを用いた自然言語解析をよる術後合併症の予測について検討した。
【方法】2010年1月から2011年の12月までに当科で実施された大腸癌根治切除が実施された症例のうち、患者の発言内容を引用したカルテ記載がある274例を対象とした。自然言語解析には、入院日から術後2日目までのカルテ記載を用い、患者の発言内容を抽出した。抽出した患者の発言内容について自然言語解析を行い、全術後合併症、Clavien -Dindo分類でGrade3以上の合併症、創部感染の発生に関する、予測モデルの構築を行なった。
【結果】対象症例274例のうち全術後合併症は87例、Grade3以上の合併症は29例、創部感染は20例に認めた。AIによる言語解析では、全術後合併症では、感度82.8%・特異度77.0%の精度、Grade3以上の術後合併症では、感度72.4%・特異度76.7%の精度、創部感染では、感度75.0%・特異度92.1%の精度でそれぞれ術後合併症を予測することができた。
【考察】AIによる自然言語解析を用いて、入院日から術後2日目までの患者発言に関するカルテ記述から術後合併症を予測するモデルの構築は可能であった。今後、それぞれの術後合併症に特徴的な患者背景因子や周術期因子を加えて解析し、予測モデルのさらなる精度向上について検討する必要がある。術後合併症リスクが患者の発言から、予測可能となれば、術後管理において早期介入が可能であると考えられる。