講演情報

[P11-2]人工肛門閉鎖術が可能であった直腸癌術後Chronic anastomotic leakageの2例

松田 直樹, 國末 浩範, 宮内 俊策, 吉浦 雄飛, 園部 奏生, 谷口 もこ, 高橋 達也, 伊達 慶一, 久保 孝文, 野﨑 功雄, 太田 徹哉 (岡山医療センター外科)
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直腸癌術後の縫合不全は外科医が遭遇しうる最も回避したい合併症のひとつである。回腸人工肛門造設術を施行し、大半は縫合不全部の治癒が得られ人工肛門閉鎖術の施行が可能となるが、縫合不全の治療に難渋し人工肛門閉鎖術の施行を断念せざるをえない例も稀にある。直腸癌術後の縫合不全に対して回腸人工肛門造設術を施行後、縫合不全の治癒が得られなかったものの人工肛門閉鎖術を施行し良好な経過を辿った2症例を経験したため報告する。
症例1は71歳男性。直腸癌に対して腹腔鏡下低位前方切除術を施行した。術後5日目、縫合不全と診断し腹腔鏡下回腸人工肛門造設術を施行した。術後5か月後の注腸造影では吻合部背側に造影剤の漏出を認め、以後経過観察していたが術後1年後の注腸造影でも縫合不全が残存していた。術後1年1か月後内視鏡下に瘻孔閉鎖を試み、瘻孔を確認できたものの周囲組織が脆弱なため困難であった。術後1年5か月後TAMISを施行し瘻孔閉鎖を試みたが瘻孔を確認することができず手術終了となった。その後の注腸造影でも縫合不全は残存していたが、術後の腹腔内膿瘍等のリスクを十分にICしたうえで術後1年10か月後に人工肛門閉鎖術を施行した。人工肛門閉鎖術後7年1か月経過した現在有害事象なく経過している。
症例2は76歳男性。直腸癌に対してロボット支援腹腔鏡下低位前方切除術を施行した。術後5日目に縫合不全と診断し保存的加療を試みたが炎症反応上昇、腹部所見の増悪を認め術後7日目に回腸人工肛門造設術を施行した。術後3か月後の注腸造影では吻合部背側に造影剤の漏出を認め、以後経過観察していたが術後8か月の注腸造影でも縫合不全が残存していた。術後のリスクを十分にICしたうえで術後10か月後に人工肛門閉鎖術を施行した。人工肛門閉鎖術後1か月経過した現在有害事象なく経過している。
遷延する直腸癌術後の縫合不全に対してリスクを十分に説明したうえでの人工肛門閉鎖術は選択肢のひとつとなり得る。