講演情報

[P11-3]誤飲したPress through packageが横行結腸癌部で穿通し腸間膜膿瘍を形成した一例

菅野 優貴, 渡辺 剛久, 小菅 起史, 永井 健, 吉田 淳, 岩﨑 喜実, 上田 和光 (筑波記念病院消化器外科)
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Press through package(PTP)は1963年に登場した薬物包装形態で、その簡便性、経済性、清潔性により現在も広く普及している。一方でPTPの誤飲報告も増加している。その大部分は上部消化管であり、大腸で穿通した報告は比較的稀である。今回われわれはPTPが横行結腸癌部で穿通し腸間膜膿瘍を形成した一例を経験した。
症例は72歳、女性。貧血の精査目的に当院紹介となった。腹痛はなかったがCT検査で横行結腸中央部の壁肥厚と腸間膜側の炎症所見を認め、当初は横行結腸憩室炎が疑われた。下部消化管内視鏡検査を施行したところ横行結腸に全周性の腫瘍があり、同部位にPTPが挟まっていた。鰐口鉗子で把持してPTPは摘出した。再度内視鏡で確認したが明らかな穿孔部は認めなかった。内腔は狭窄しておりスコープの通過は困難であったが残渣や口側腸管の拡張はなく腸閉塞には至っていなかった。生検結果から横行結腸癌と診断した。胆嚢ポリープの合併もあったため横行結腸部分切除術と胆嚢摘出術を施行した。術中所見で腫瘍近傍の腸間膜に膿瘍が形成されており、膿瘍部も可能な限り除去した。術後の病理結果から横行結腸癌T3N0M0 pStageⅡAであったが、PTPによる穿通部の断端は癌陽性であった。同時に提出した膿瘍壁には癌は認めなかった。術後補助化学療法を施行し、術後1年経過したが無再発生存中である。文献的考察を加えて報告する。