講演情報

[P12-3]大腸憩室炎穿孔に対する保存療法:エレンタールの有用性に関する検討

黒崎 剛史, 小池 淳一, 浜畑 幸弘, 堤 修, 指山 浩志, 安田 卓, 中山 洋, 川村 敦子, 鈴木 綾, 高野 竜太郎, 城後 友子 (辻仲病院柏の葉)
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【背景】大腸憩室炎は従来、Hinchey分類Stage3以上では手術適応とされてきた。しかし昨今、画像上軽度の穿孔や限局性腹膜炎を呈する症例では保存的治療が選択されることが増えている。保存療法中の栄養管理は重要であり、消化管への負担が少ない経腸栄養製剤の有用性が示唆されているが、エレンタールの有効性に関する報告は限られている。
【目的】当院で入院加療を行ったS状結腸憩室炎Hinchey分類Stage3に対し、経腸栄養製剤エレンタールの導入が治療経過に及ぼす影響を検討する。
【方法】当院で2024年4月1日~2025年4月1日の期間で入院加療を行ったS状結腸憩室炎Hinchey分類Stage3の症例5例を対象とした。男女比は男性3名、女性2名であった。うち、絶食後の栄養管理としてエレンタール経口投与を行った群(E群, n=2)と、投与を行わなかった群(非E群, n=3)に分け、平均在院日数、CRP半減期、緊急手術の有無を後方視的に比較検討した。
【結果】CRPの半減日数はE群では非E群に比較し短く(平均5.5日 vs 7.6日)、在院日数も短縮傾向を示した(平均13.5日 vs 25日)。E群では全例で手術回避が可能であった一方、非E群のうち2例は緊急で人工肛門造設術を要した。
【考察】S状結腸憩室炎Hinchey分類Stage3の保存療法において、エレンタールによる早期の経腸栄養導入は炎症の早期収束と入院期間短縮に寄与する可能性がある。エレンタールは低残渣で消化吸収性に優れ、腸管への負荷が少ないことがその一因と考えられる。
【結語】穿孔や限局性腹膜炎を伴う結腸憩室の保存的治療において、エレンタールの併用は新たな治療選択肢としての可能性を示すものである。