講演情報
[P13-4]低位前方切除後症候群(LARS)の症状の推移とその評価についての検討〜術後アンケートをもとに〜
國友 愛奈, 松村 卓樹, 上田 翔, 余語 孝乃助, 倉橋 岳宏, 白井 信太郎, 松下 希美, 福山 貴大, 戸田 瑤子, 安井 講平, 篠原 健太郎, 大澤 高陽, 安藤 公隆, 深見 保之, 金子 健一朗, 佐野 力 (愛知医科大学病院消化器外科)
背景:低位前方切除後症候群(LARS)は直腸切除後の患者QOLにおいて大きな問題となるが、症状の詳細や経時的変化は明らかでない。
目的:LARSの経時的変化やLARSの中でも特に臨床的に問題となる症状を調査する。
対象:当院で直腸癌(RS~Rb:AV=15cm以下)に対して肛門を温存する術式を施行した患者で、2023.7-2024.6に当科外来を受診し、アンケート採取を行った82名。一時的ストーマ造設をした患者は、ストーマ閉鎖日を基点として対象患者に含める。
方法:後方視的カルテレビューとアンケート(LARSスコア、Wexnerスコア、独自の質問事項)から患者背景やLARS症状の詳細を調査した。
結果:手術日は2015.11-2024.4の期間が含まれ、年齢中央値61歳、男性:女性=51:31、NAC施行2例、腫瘍占居部位RS/Ra/Rb=32/35/15、アプローチは開腹:腹腔鏡下:ロボット支援下1:49:32、術式HAR:LAR=21:61、郭清D2:D3=8:74、ストーマあり32例、TMEあり23例、、術後合併症23例、うち縫合不全2例(grade3b:1例)、術後補助療法あり25例、再発4例(肺3、肝臓1)、アンケートまでの期間中央値29.0ヶ月 (四分位範囲:13.5-50.7)、アンケート採取時化学療法中は3例。アンケート結果では、最も苦痛な症状:繰り返す排便n=47>頻便n=18>切迫した便意n=11>便・ガス失禁n=6、残存している症状:繰り返す排便n=46>頻便n=15>便・ガス失禁n=11>切迫した便意 n=10であった。①術後2年以内の患者(n=28)と②それ以降の患者(n=54)で比較すると、LARSスコア中央値は①33点(範囲12-39)、②29.5点(範囲0-36)であったのに対し(p=0.13)、Wexnerスコア中央値は①6点(範囲0-18)、②3.5点(範囲0-17)で有意に術後2年以降の患者で低値だった(p=0.045)。現在のLARS症状の程度を点数化(0〜10点)すると①中央値4点(範囲0-9②中央値3点(範囲0-10)で有意差はなかった(p=0.56)。
結論:経時的にWexnerスコアの低下が見られたのは、特にガス・便失禁症状の改善を反映した結果と考えられ、繰り返す排便・切迫した排便は術後数年経過しても持続することが多い。今後はその機序やリスクの解明・治療の発展が望まれる。
目的:LARSの経時的変化やLARSの中でも特に臨床的に問題となる症状を調査する。
対象:当院で直腸癌(RS~Rb:AV=15cm以下)に対して肛門を温存する術式を施行した患者で、2023.7-2024.6に当科外来を受診し、アンケート採取を行った82名。一時的ストーマ造設をした患者は、ストーマ閉鎖日を基点として対象患者に含める。
方法:後方視的カルテレビューとアンケート(LARSスコア、Wexnerスコア、独自の質問事項)から患者背景やLARS症状の詳細を調査した。
結果:手術日は2015.11-2024.4の期間が含まれ、年齢中央値61歳、男性:女性=51:31、NAC施行2例、腫瘍占居部位RS/Ra/Rb=32/35/15、アプローチは開腹:腹腔鏡下:ロボット支援下1:49:32、術式HAR:LAR=21:61、郭清D2:D3=8:74、ストーマあり32例、TMEあり23例、、術後合併症23例、うち縫合不全2例(grade3b:1例)、術後補助療法あり25例、再発4例(肺3、肝臓1)、アンケートまでの期間中央値29.0ヶ月 (四分位範囲:13.5-50.7)、アンケート採取時化学療法中は3例。アンケート結果では、最も苦痛な症状:繰り返す排便n=47>頻便n=18>切迫した便意n=11>便・ガス失禁n=6、残存している症状:繰り返す排便n=46>頻便n=15>便・ガス失禁n=11>切迫した便意 n=10であった。①術後2年以内の患者(n=28)と②それ以降の患者(n=54)で比較すると、LARSスコア中央値は①33点(範囲12-39)、②29.5点(範囲0-36)であったのに対し(p=0.13)、Wexnerスコア中央値は①6点(範囲0-18)、②3.5点(範囲0-17)で有意に術後2年以降の患者で低値だった(p=0.045)。現在のLARS症状の程度を点数化(0〜10点)すると①中央値4点(範囲0-9②中央値3点(範囲0-10)で有意差はなかった(p=0.56)。
結論:経時的にWexnerスコアの低下が見られたのは、特にガス・便失禁症状の改善を反映した結果と考えられ、繰り返す排便・切迫した排便は術後数年経過しても持続することが多い。今後はその機序やリスクの解明・治療の発展が望まれる。