講演情報

[P13-6]直腸脱合併骨盤臓器脱に対して腹腔鏡下直腸固定術と腹腔鏡下仙骨膣固定術を施行し化膿性脊椎炎を合併した1例

安田 潤, 弓場 健義, 相馬 大人, 内海 昌子, 渡部 晃大, 竹中 雄也, 久能 英法, 三宅 祐一朗, 小野 朋二郎, 齋藤 徹, 根津 理一郎 (伯鳳会大阪中央病院外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【緒言】直腸脱,子宮脱などの骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下腹側直腸固定術(LVR)や腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC)などの術式は再発率が低く普及が進んでいる.しかし,一方で術後腹腔内膿瘍やメッシュ関連の合併症も報告されている.今回,骨盤臓器脱に対してLVRとLSCを同時に施行し術後に化膿性脊椎炎を合併した1例を経験したので報告する.【症例】症例は80歳女性,直腸脱の診断で他院にて経肛門的直腸脱手術を施行される.直腸脱再燃を認め手術加療目的で当院に紹介受診となる.直腸脱と膀胱瘤も認めたため,当院泌尿器科と合同でLVRとLSCを同時に施行した.術後第4病日に発熱,炎症所見高値,腹部CT検査で仙骨前面に骨盤内膿瘍を認めたため抗生剤投与にて保存的加療を行い軽快し術後第11病日に退院した.退院約2週間後に腰痛が出現し他院に緊急入院となる.腹部CT検査で骨盤内膿瘍の再燃を認め,当院に転院し抗生剤加療を継続するも腰痛が悪化しMRI検査で化膿性脊椎炎と診断,抗生剤投与を継続し仙骨前面の膿瘍は縮小し化膿性脊椎炎も改善するも第5腰椎の骨融解を認めたため,他院整形外科にて腰椎後方固定術を施行した.術後は症状も改善し膿瘍の再燃、脊椎炎の増悪認めず現在外来にて通院加療中である.【考察】LSCやLVRなどの腹腔鏡下手術は再発率や合併症も少なく多くの施設で現在行われている手術ではあるが,非常にまれな合併症として脊椎炎も報告されている.感染経路としては術中膣壁損傷や骨盤内膿瘍によるメッシュ感染.さらに逆行性にメッシュ固定部での前縦靭帯から椎間板,椎体に感染が進展したと考えられる.一般的な化膿性脊椎炎は血行性であるが,骨盤臓器脱手術によって引き起こされる本症例はメッシュ留置を介しての脊椎領域への直接感染が原因と考えられる.また仙骨へのメッシュ固定も当院ではタッカーで仙骨骨膜へ固定しているが,骨膜を貫通する場合は仙骨の痛みや脊椎炎の発生の危険がある.治療に関しては培養結果に応じて約6週間の抗生剤投与が基本であり,改善しない場合は感染病巣や異物除去などの外科的治療が必要である.【結語】骨盤臓器脱術後の腰痛や神経痛には化膿性脊椎炎の可能性があることも念頭に置く必要がある.