講演情報

[P14-3]高齢者大腸癌の腹腔鏡下手術の検討

増田 太郎, 中川 和也, 験馬 悠介, 本田 祥子, 伊藤 慧, 太田 絵美, 山岸 茂 (藤沢市民病院外科)
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背景:
総人口の減少と高齢者の増加に伴い、2035年には3人に1人の高齢化率となることが予想されており、それに伴って高齢者の大腸癌手術も増加することが予想される。高齢者は臓器予備能や免疫能が低下し、術後合併症が重篤化する場合があるが、大腸癌手術に関して一定の見解は得られていない。
目的:
当院の高齢者における大腸癌の腹腔鏡下手術を検討する。
対象と方法:
2010年4月から2024年3月までに大腸癌に対して、耐術可能と判断し、腹腔鏡下手術を施行した1298例について、90歳以上の超高齢者の症例(A群) 13例、75歳以上89歳以下の後期高齢者の症例(B群) 485例、74歳以下の症例(C群) 800例における、患者背景因子、手術因子、術後成績を後方視的に検討した。
結果:
3群の比較で、患者背景因子では、年齢中央値はA群91歳、B群79歳、C群66歳であり、性別、糖尿病の有無に差はなく、BMI(20.7 vs 21.9 vs 22.4、p=0.01)、高血圧(69.2% vs 50.9% vs 34.8%、p<0.01)、心疾患(30.8% vs 16.5% vs 9.8%、p<0.01)、ASA-PS 3以上(15.4% vs 9.5% vs 4.1%、p<0.01)に差を認めた。手術因子では、出血量、リンパ節郭清度、進行度に差はなく、手術時間 (180分 vs 215分 vs 229分、p=0.01)に差を認めた。術式に関して、A群では腸閉塞と出血予防のため腫瘍摘出術を行った症例や、吻合のリスクが高くハルトマン手術を選択した症例があった。術後成績では、Clavien Dindo分類 Grade 3以上の術後合併症、術後最高体温、術後最高CRP、術後在院日数に差はなかった。術後補助化学療法(0% vs 19.4% vs 36.6%、p<0.01)に差を認めた。術後3年無再発生存期間に差はなかった(100% vs 85.8% vs 87.1%、p=0.44)。
結語:
耐術可能な高齢者の大腸癌に対する腹腔鏡下手術は、症例に応じた術式を選択すれば、術後合併症の増加はなく手術が施行可能と考える。