講演情報

[P15-2]高齢大腸癌患者に対する術前Geriatric Assessmentは有用か?

関口 久美子1, 松田 明久2, 清水 貴夫1, 武田 幸樹1, 横山 康行2, 太田 竜1, 山田 岳史2, 谷合 信彦1, 吉田 寛2 (1.日本医科大学武蔵小杉病院消化器外科, 2.日本医科大学付属病院消化器外科)
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【緒言】世界中で高齢化が進み,加齢とともに癌患者が増加しているため,高齢癌患者の手術治療は重要な問題となっている.しかし,その具体的な治療指針は明示されていない.高齢者機能評価(geriatric assessment; GA)は,高齢者個人の全体像を把握するための多元的で包括的な評価方法である.Geriatric 8(G8)は,栄養状態の評価,薬剤数,年齢など8項目からなる比較的簡便な方法である.そこで,高齢癌患者を対象とし,G8を用いた機能評価による術後成績を比較検討した.【方法】2021年9月から2023年3月までに日本医科大学武蔵小杉病院で行った大腸癌手術のうち,他臓器同時手術,経肛門手術を除いた159例を対象とした.【結果】65歳以上は105例で,全体の65.2%だった.G8の中央値は12.5 (範囲3.0-16.5)点であり,12.5点以上を高値群(H群),12点以下を低値群(L群)として2群に分け,比較検討した.年齢はH群73.0 (65-86)歳,L群80.0 (65-101)歳で,L群が有意に高く(p<0.05),BMIはH群23.1±0.3,L群19.7±0.4でL群が有意に低値だった(p<0.05).大腸癌閉塞はH群23.3%で,L群44.4%とL群で有意に多かった(p=0.034).穿孔はH群で0%,L群で8.9%にみられ,L群が有意に多かった(p=0.031).手術時間はH群295.0±17.9分,L群226.0±18.0分(p=0.013)とL群が有意に短く,術中出血量はH群50.0±86.8ml,L群30.0±55.5ml(p=0.725)と有意差を認めなかった.全ての術後合併症はH群28.3%,L群42.2%(p=0,152)と有意差はないもののL群で多く,Clavien-Dindo≧3の重症合併症はH群6.7%,L群26.7%(p=0.006)と有意にL群で多かった.術後入院期間はH群12.0±1.5日,L群13.0±2.9日(p=0.144)と有意差を認めなかった.多変量解析によるClavien-Dindo≧3の重症術後合併症のリスク因子として,高血圧,左側病変,G8≦11.5が独立した予測因子として抽出された.【結論】G8による術前評価が周術期合併症のリスク評価となることが示された.高齢癌患者に対してGAによる層別化に応じた周術期の介入を行い,手術の縮小化など治療方針の変更を行うことや,外科的治療前の介入を行うことにより治療成績が改善するかについても,今後の検討課題である.