講演情報
[P15-3]高齢者大腸癌に対する術前栄養・炎症指標を用いた予後予測の検討
佐野 修平, 目谷 勇貴, 白川 智沙斗, 沢田 尭史, 藤好 真人, 折茂 達也, 田原 宗徳, 秦 庸壮, 本間 重紀 (札幌厚生病院外科)
【背景・目的】
高齢者大腸癌患者では、術前の栄養状態や全身炎症反応が術後予後や合併症に影響を与える可能性が高く、術前の評価が重要である。一方で、高齢者に特化した予後予測や合併症リスク評価において、明確な指標は十分に確立されていない。本研究では、80歳以上のStage III以下大腸癌患者を対象に、術前の栄養・炎症関連指標であるGNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)、PNI(Prognostic Nutritional Index)、NLR(Neutrophil-to-Lymphocyte Ratio)、BMIに着目し、再発生存(RFS)、全生存(OS)、および術後合併症との関連性を検討した。
【方法】
2018年~2021年に当院で手術を施行した80歳以上の大腸癌患者のうち、Stage 0-IIIで根治切除を受けた78例を対象とした。術前の血液検査および身体計測値よりGNRI、PNI、NLR、BMIを算出し、各指標に基づいて2群に分類した。主要評価項目をRFSおよびOS、副次評価項目としてClavien–Dindo分類Grade II以上の術後合併症発生率とし、Kaplan–Meier法およびCox比例ハザードモデルで解析を行った。
【結果】
性別は男性29例(37.2%)、女性49例(62.8%)、pStageは 0-I 20例(25.6%)、II 32例(41.0%)、III 26例(33.3%)であった。NLR高値群は低値群と比較して3年RFSが有意に低く(63.9% vs 83.6%、p=0.036)、多変量解析でも独立した予後因子であった(HR 0.35, 95%CI: 0.13–0.96, p=0.042)。一方、OSではNLR高値群の3年生存率は83.1%、低値群は97.6%であったが、有意差は認められなかった(p=0.102)。BMI低値群でもRFSおよびOSの不良傾向を示したが、有意差には至らなかった。GNRIおよびPNIについても、低値群で再発・死亡率の上昇傾向はみられたが、統計学的有意性はなかった。なお、いずれの指標においても術後Clavien–Dindo分類Grade III以上の合併症との有意な関連は認められなかった。
【結論】
80歳以上のステージI–III大腸癌患者において、術前NLRは再発の独立した予後因子であり、BMIや他の栄養指標も予後不良の傾向を示した。NLRはOSには有意な影響を及ぼさなかったが、RFSの層別化において有用であり、術前評価の一助となる可能性がある。
高齢者大腸癌患者では、術前の栄養状態や全身炎症反応が術後予後や合併症に影響を与える可能性が高く、術前の評価が重要である。一方で、高齢者に特化した予後予測や合併症リスク評価において、明確な指標は十分に確立されていない。本研究では、80歳以上のStage III以下大腸癌患者を対象に、術前の栄養・炎症関連指標であるGNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)、PNI(Prognostic Nutritional Index)、NLR(Neutrophil-to-Lymphocyte Ratio)、BMIに着目し、再発生存(RFS)、全生存(OS)、および術後合併症との関連性を検討した。
【方法】
2018年~2021年に当院で手術を施行した80歳以上の大腸癌患者のうち、Stage 0-IIIで根治切除を受けた78例を対象とした。術前の血液検査および身体計測値よりGNRI、PNI、NLR、BMIを算出し、各指標に基づいて2群に分類した。主要評価項目をRFSおよびOS、副次評価項目としてClavien–Dindo分類Grade II以上の術後合併症発生率とし、Kaplan–Meier法およびCox比例ハザードモデルで解析を行った。
【結果】
性別は男性29例(37.2%)、女性49例(62.8%)、pStageは 0-I 20例(25.6%)、II 32例(41.0%)、III 26例(33.3%)であった。NLR高値群は低値群と比較して3年RFSが有意に低く(63.9% vs 83.6%、p=0.036)、多変量解析でも独立した予後因子であった(HR 0.35, 95%CI: 0.13–0.96, p=0.042)。一方、OSではNLR高値群の3年生存率は83.1%、低値群は97.6%であったが、有意差は認められなかった(p=0.102)。BMI低値群でもRFSおよびOSの不良傾向を示したが、有意差には至らなかった。GNRIおよびPNIについても、低値群で再発・死亡率の上昇傾向はみられたが、統計学的有意性はなかった。なお、いずれの指標においても術後Clavien–Dindo分類Grade III以上の合併症との有意な関連は認められなかった。
【結論】
80歳以上のステージI–III大腸癌患者において、術前NLRは再発の独立した予後因子であり、BMIや他の栄養指標も予後不良の傾向を示した。NLRはOSには有意な影響を及ぼさなかったが、RFSの層別化において有用であり、術前評価の一助となる可能性がある。