講演情報

[P16-4]75歳以上pStage III大腸癌に対する術後補助化学療法の実態

大澤 ヒデキ, 池嶋 遼, 吉岡 慎一 (八尾市立病院消化器外科)
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【背景】pStage III大腸癌に対する術後補助化学療法(adjuvant chemotherapy:ACT)は、生存率の向上に寄与することが現在の標準治療として広く認識されている。一方で、75歳以上の高齢者における導入実態や治療完遂率、中止理由と予後との関連に関する報告は国内では限られている。
【対象と方法】2018~2023年に当院で根治切除を行った75歳以上のpStage III大腸癌症例55例を対象に、ACT施行の有無に基づき、患者背景・治療内容・転帰を後方視的に検討した。
【結果】ACTは22例(40.0%)に施行され、18例(81.8%)が完遂、4例(18.2%)が中止となった。非施行群は施行群に比し年齢中央値が有意に高く(81歳 vs 77歳、p=0.0013)、脳血管障害(30% vs 10%)の合併が多かった。認知症の有無は群間で差を認めなかったが、非施行群で多い傾向を示した(p=0.071)。初回減量は11例(50.0%)、途中減量は4例(18.2%)に行われ、減量があっても多くが完遂されていた。3年RFSは施行群で86.4%、非施行群で81.8%、3年OSは施行群で95.5%、非施行群で78.8%であったが、有意差は認めなかった。中止理由はHFS(2例)、倦怠感(2例)、下痢(1例)であった。
【結論】本検討では、75歳以上のpStage III大腸癌症例においてACTは40%に施行され、年齢や脳血管障害、認知症の有無が導入判断に影響していた。減量を伴っても多くの症例で治療が完遂されていた。ACT施行群の3年RFSおよびOSは非施行群より高い数値を示したが、有意差は認められず、施行可否に関わる患者背景が予後に影響を与えた可能性がある。高齢者に対するACTの導入は、全身状態や併存疾患を踏まえた個別の判断が重要と考えられた。