講演情報

[P16-5]80歳以上の高齢者に対する大腸癌術後補助化学療法の有用性について

辻村 直人, 鄭 充善, 吉川 幸宏, 大原 信福, 玉井 皓己, 森 総一郎, 西田 謙太郎, 浜川 卓也, 瀧内 大輔, 辻江 正徳, 赤丸 祐介 (大阪ろうさい病院外科)
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【背景】
大腸癌治療ガイドライン2024では、80歳以上の高齢者への術後補助化学療法(AC)は、PSが良好で化学療法に関してリスクとなる基礎疾患、併存症がなく主要臓器機能が保たれていれば術後補助化学療法を弱く推奨され、オキサリプラチン(OX)併用療法に関しては、フッ化ピリミジンに対するOXの上乗せ効果は明確ではないため、行わないことを弱く推奨するとある。
 【目的】
 80歳以上の高齢者に対するACの有用性について検討した。
 【方法】
 2010年1月から2021年12月まででpStageIII大腸癌と診断された80歳以上の症例は127例であった。ACを施行した症例は17例(AC群)で、ACを施行しなかった症例は110例(非AC群)で、5年無再発生存率(5y-RFS)、5年癌特異的生存率(5y-CSS)、5年全生存率(5y-OS)を比較検討した。
 【結果】
AC完遂率は64.7%であった。内訳はCAPOX4コースが4例中3例、CAPOX8コースが1例中1例、Capecitabine8コースが8例中6例、S-1 4コースが1例中0例、UFT/LV 5コースが3例中2例であった。
AC中止理由は、嘔気、薬疹、手足症候群、腎障害、肝転移であった。
5y-RFSはAC群で64.7%、非AC群で55.3%であり、有意差を認めなかった(Log-rank: p=0.37)。5y-OS はAC群で70.6%、非AC群で57.8%であり、有意差を認めなかった(Log-rank: p=0.28)。5y-CSS はAC群で70.6%、非AC群で63.6%であり、有意差を認めなかった(Log-rank: p=0.44)。
 【考察】
80歳以上のACは再発や予後改善に有意な結果を得られなかった。有意差を認めなかったのはAC群の症例数が少ないこと、ACの完遂率が64.7%であり十分な効果を得られなかった可能性があること、OX併用療法が少ないことが考えられる。
 【結語】
今回の解析では非血液毒性が原因でACが中止となっているため、非血液毒性を予防し完遂率を上げ、再度検討する必要がある。