講演情報
[P19-3]術前に子宮・膀胱浸潤が疑われたS状結腸癌に対して, 蛍光尿道カテーテルと子宮トランスイルミネーターを用いてTa-TME併用下に腹腔鏡下骨盤内臓全摘を行った一例
川窪 陽向1, 柳 舜仁1, 中嶋 俊介1, 河合 裕成1, 小林 毅大1, 今泉 佑太1, 伊藤 隆介1, 衛藤 謙2 (1.川口市立医療センター, 2.東京慈恵会医科大学外科学講座)
【症例】70歳代, 女性.
【現病歴】腹痛にて救急搬送, 緊急入院となった.
【検査所見】
CT: S状結腸に不整壁肥厚像と周囲リンパ節腫大を認め, 子宮体部との境界が不明瞭であった. S状結腸-膀胱間に膿瘍と瘻孔形成を認めた.
下部消化管内視鏡: S状結腸に半周性2型病変(病理: tub1)を認めた, 穿通・膀胱瘻を形成していた為, 口側観察は行わなかった.
MRI:T2強調像においてS状結腸と膀胱および子宮間に連続する低信号領域を認めた.
【診断】S状結腸癌 cT4b(uterus, bladder)N2aM0 StageⅢc
【手術】
低栄養かつ膿瘍と尿路感染のため, まず横行結腸人工肛門を造設し, 感染と栄養状態の改善後に根治手術を行った. 骨盤内膿瘍や膀胱瘻の状況から, R0切除のためには子宮・膀胱の一括切除が必要となる可能性が高いと判断しTa-TME併用下に腹腔鏡下骨盤内臓全摘術を施行した.
また骨盤内の臓器解剖のメルクマールとする為,
NIRCTM蛍光尿管カテーテル・蛍光尿道カテーテル(Cardinal Health社), 子宮トランスイルミネーター(メディカルリーダース社)を併用した.
手術は11時間44分, 出血5gで終了, 経過良好につき術後9日目に退院. R0切除が得られた.
【考察】本症例は直腸と子宮, 膀胱が一塊となり, 定型的手術手順は取れず, 手術のメルクマールとなる尿管・尿道や膣円蓋部の情報を通常光観察で得る事は困難であった。しかし、複数の蛍光デバイスを使用する事で、尿管・尿道・膣円蓋を同時に認識した安全な手術が実現できた.
尿道と膣円蓋は解剖学的に近接するため、近赤外蛍光観察で同時に蛍光すると解剖学的境界の区別が得難い瞬間があった。子宮トランスイルミネーターは光源装置との接続で自発光により膣円蓋部の透過照明を得るデバイスで、通常光観察でも白色光を発し、近赤外蛍光観察でその効果を増幅できる。蛍光尿道カテーテルは近赤外蛍光により蛍光を発するが、通常光観察では自発光を発さない。本症例では通常光観察と近赤外蛍光観察を切り替える事で、尿道と膣円蓋部の境界を鮮明に区別する手法を得る事ができた。本法は複雑な骨盤内病変における低侵襲手術に貢献する可能性がある。
【現病歴】腹痛にて救急搬送, 緊急入院となった.
【検査所見】
CT: S状結腸に不整壁肥厚像と周囲リンパ節腫大を認め, 子宮体部との境界が不明瞭であった. S状結腸-膀胱間に膿瘍と瘻孔形成を認めた.
下部消化管内視鏡: S状結腸に半周性2型病変(病理: tub1)を認めた, 穿通・膀胱瘻を形成していた為, 口側観察は行わなかった.
MRI:T2強調像においてS状結腸と膀胱および子宮間に連続する低信号領域を認めた.
【診断】S状結腸癌 cT4b(uterus, bladder)N2aM0 StageⅢc
【手術】
低栄養かつ膿瘍と尿路感染のため, まず横行結腸人工肛門を造設し, 感染と栄養状態の改善後に根治手術を行った. 骨盤内膿瘍や膀胱瘻の状況から, R0切除のためには子宮・膀胱の一括切除が必要となる可能性が高いと判断しTa-TME併用下に腹腔鏡下骨盤内臓全摘術を施行した.
また骨盤内の臓器解剖のメルクマールとする為,
NIRCTM蛍光尿管カテーテル・蛍光尿道カテーテル(Cardinal Health社), 子宮トランスイルミネーター(メディカルリーダース社)を併用した.
手術は11時間44分, 出血5gで終了, 経過良好につき術後9日目に退院. R0切除が得られた.
【考察】本症例は直腸と子宮, 膀胱が一塊となり, 定型的手術手順は取れず, 手術のメルクマールとなる尿管・尿道や膣円蓋部の情報を通常光観察で得る事は困難であった。しかし、複数の蛍光デバイスを使用する事で、尿管・尿道・膣円蓋を同時に認識した安全な手術が実現できた.
尿道と膣円蓋は解剖学的に近接するため、近赤外蛍光観察で同時に蛍光すると解剖学的境界の区別が得難い瞬間があった。子宮トランスイルミネーターは光源装置との接続で自発光により膣円蓋部の透過照明を得るデバイスで、通常光観察でも白色光を発し、近赤外蛍光観察でその効果を増幅できる。蛍光尿道カテーテルは近赤外蛍光により蛍光を発するが、通常光観察では自発光を発さない。本症例では通常光観察と近赤外蛍光観察を切り替える事で、尿道と膣円蓋部の境界を鮮明に区別する手法を得る事ができた。本法は複雑な骨盤内病変における低侵襲手術に貢献する可能性がある。